恒例! ロイヌ村の冒険者ギルド交流試合!

第6話 交流試合の打ち合わせ

 冬の雪が融け、小鳥が囀り、花が咲き誇る季節。春の妖精が世界にいるからこそだと言われている。こういうのは放置で。世界どうこうは俺もよく分からない。今は目の前のことをやらなくてはいけないのだ。


「恒例の交流試合の打ち合わせを行います」


 それはもうひとつの冒険者ギルドとの交流試合がある。そういうわけで俺はギルドマスターとして、別のギルドマスターと顔を合わせている。流石にうちのギルドだと狭いので、お邪魔している形だ。三階にある応接室で小枝を咥えているおじさん(元々冒険者だったらしい)のセオドアがここのギルドマスターだ。色々と世話になっている。


「ああ。よろしく頼む」


 武人のように堅い。態度も。顔も。基本的な流れを確認して、交流試合のことを話そうとしたら、セオドアが真面目な表情であることを要求してきた。これだ。


「派手に暴れてくれ」


 俺なら同じ立場なら手加減してくれと言う。規模は間違いなく負けるが、戦力はうちの方がある。ボコボコにされる光景なんて見たくないだろう。自分のプライドを犠牲にして、土下座(この国にそういった文化はないが)して、頼む。セオドアはどういった意図で発言したのかを考える必要がある。セオドア本人はとても素直なので、聞けばいいのだが。


「……何故そういう懇願をするんですか」


 あっさりと答えてくれる。


「手合わせをする機会になるからな。確かに規模はうちの方が大きい。だが歴史の浅いお前達の方が場数を踏んでいるし、戦力だってあるし、神器も所持している。冒険者なら誰でも試合をやりたがるってもんだ」


 そういうもんなのかと傾げてしまうが、単に俺自身は異世界から来た魔法使いで、セオドアは武人でという違いから来ているのだろう。あまりにも価値観が異なっている。何度か対面して話していて、感じていることだ。


「あとは屋台だ。肉と酒がいる。その確保は俺に任せてくれ」


 セオドアは長年、ロイヌ村に住んでいる。ツテは俺以上に持っている。こういったイベントの設営は彼に任せた方が効率いいし、助かっている。


「助かります。そうなると魔法関連は俺達がやりましょう」


 セオドアさんがホッとしたような顔になる。


「助かる。精密な魔法なんて使えないからな。治安についても俺達がやろう。多勢だからこそ出来ることもある。今回の打ち合わせはここまでにしておこう。次回は七日後ということで構わないか」

「ええ。それで問題ありません」


 癖で頭を下げて、立ち上がる。応接室から出て、下って、建物から出る。ふうと息を吐く。未だに慣れない。血の気が多い冒険者との接し方の要領が分からない。セオドアはまだ話し合いに応じてくれるが、他所だとたまに通じない時もある。帰った後は少し休むとしよう。確かまだお茶があったはずだ。

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