第7話 ギルドメンバーの会議の見守り
交流試合まであと三日。ギルドのホール内で会議が始まった。俺は何もしない。戦いに関してはド素人だからだ。見守ることに専念する。
「ほぼ大集合って感じっすよね」
レインが言った通り、所属する冒険者がほぼ揃っている。ウェーブの黒髪に褐色肌の女性、唯一子育て中のジュナもいる。あとは遠征中のヴァレンがいないぐらいだ。そういえば数分前に、その遠征中の彼女から連絡が入っていた。今のうちに報告しておこう。
「そうだな。そのヴァレンから連絡があった」
「あったんすね。それで」
レインに内容をそのまま伝える。
「空に浮かぶ島のダンジョンに挑戦中らしい」
「空っすか。色んなアニメを思い出すっすねぇ」
アニメ映画を思い出すが、ここでは口に出さない。言ったところで通じる奴はレインだけだからだ。
「神の試練があった場合は神器確定になるんすけど、可能性はどのぐらいあると思うんすか」
神々が残したダンジョンの場合、試練を受けることが可能だ。クリアしたら、神器と呼ばれるとんでもない代物の主となる。既にうちの所属のプラチナ級冒険者が所持しちゃっている。もしそういった類が追加したとなると……頭が痛くなる。まだ確定ではないが。
「まだあると断定できたわけではないが」
「あーもしゲットしちゃったら、パワーバランスがおかしくなるっすもんねぇ」
レインが苦笑いするほどのぶっ壊れが神器だ。性質上、国家が簡単に扱えるものではないし、制限がかかっている。国同士の戦で使えるものではない。それでもパワーバランスを崩す要因であることには変わらない。交流試合が迫っている時にこの問題が浮上してくるのは流石に辛い。
「とりあえず交流試合終えてからでいいんじゃないっすかね。神器がない、ふっつーのダンジョンって可能性もあるし、神の試練を受けて失敗する時だってあるし」
何か察したのか、レインがフォローしてくれた。そうだ。まだ神器入手を確定したわけではない。
「そうだな。そうあって欲しい」
何か引っ張られていると思い、視線を下に移す。黒髪金目のシンちゃんが上目遣いをしていた。可愛い。妹みたいで。
「ヴァレン、ダンジョンに突入?」
身長差が結構あるので、俺が膝を曲げて接する。勿論声は優しめで。
「入ったらしい。数日後に連絡が入ってくるはずだ。話し合いはどうだ」
「決まった」
いつの間にか決まっていた。マスターとして確認しておく必要がある。
「マスター、決まりましたよ!」
レインから影響を受けまくっている
「シンちゃんから聞いた。それで誰が出るんだ」
交流試合は三度試合がある。年齢の関係でシンちゃんは参加できないし、テレジアはシスターとしての仕事があるため無理なのだ。プラチナランクのジュナとウィンリアは本当の意味で試合にならないので不参加。ヴァレンは遠征中で不在。五人の中から選ぶ必要があるわけだ。誰が参加するのやらと、俺は紙を見る。メイプル。ロヒーニャ。リンカ。この三人が試合をするというわけらしい。
「私もやりたい!」
声量のある少女の声が耳に突き刺さる。不満だということが良く分かる。ちらりと見ると、短い白髪の少女が虹色の羽根をまき散らしていた。フィロムという名前だ。年齢は十四歳だが、行動が完全に幼稚園児と変わらない。よほど出たかったのだろう。しかし。
「あなたの場合、物を壊すもの。この前だって、誰が弁償したのかしらね?」
褐色肌に黒い髪のリアルお母さんのジュナが指摘した通り、戦闘をするだけで物を壊す。この間の弁償で金貨三枚使った。サラリーマン三か月分ごっそり使った感じだった。なので出来る限り、ああいった催し物の試合には出させない。彼女には申し訳ないが。
「お前向きのクエストがあったらすぐ伝えるからな」
軽くフォローするように言っておいたら、フィロムはコクコクと頷いてくれた。自覚しているし、改善したいと思っているのも知っている。
「選出するメンバーを伝えた。ならば次にやることは」
皮鎧を纏う金髪碧眼の獣耳の女性のウィンリアが前に出る。ギルドマスターとして、静かに彼女達の会議を聞くとしよう。
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