それは破滅か幸福か。吸血鬼狩りの聖騎士見習いが踊るホラーファンタジー。

 主人公のミシェルは、吸血鬼討伐集団「シアン・ド・ギャルド」に属する聖騎士見習い。特注の弩(いしゆみ)を武器に、活躍を夢見て日々奮闘中。若く優秀な隊長のリシュアンを筆頭に、血生臭くも充実した生活を送っていた。

 だがある日、「シアン・ド・ギャルド」は異動が決まる。何故か異動先は吸血鬼被害が無いような平和な交易都市。同時に新しく配属された副隊長は嫌味な奴でつまらない。活躍の機会を得られないまま過ごす「シアン・ド・ギャルド」のメンバーは、隊長のリシュアンに秘密で吸血鬼探しに繰り出すと、貧民区で吸血鬼と教会支部の裏取引の疑惑を見つけた。真相を突き止めるべく動き出すが……。

 作品の紹介文にもある通り、中世フランス風の異世界を舞台にしたダークファンタジー×恋愛×サスペンス。恐ろしい姿の吸血鬼に教会の胡散臭い疑惑と、緊張感溢れる要素が多々登場しますが、「シアン・ド・ギャルド」の陽気なメンバーにちりばめられたコメディ要素で緩急のバランスが取られており、とても読みやすい世界観に仕上がっています。

 そして、何故吸血鬼討伐が目的である「シアン・ド・ギャルド」が吸血鬼被害の無い地へ異動になったのか、突然配属された嫌味な副隊長の目的は何なのか、貧民区の吸血鬼と教会の裏取引は実在するのかというサスペンス要素がストーリーを引っ張ります。恋愛ともありますが、それはミシェルが抱える重大な秘密にも関わっており……。と、兎に角色んな要素がてんこもり。私はダークファンタジーが好きなので読み始めましたが、どの要素もしっかり描かれており退屈しない筈。

 果たして新任地に吸血鬼は実在するのか。ミシェルが抱える秘密を暴く恋の行く末は。そして、時代と運命に翻弄されるミシェルが選び取った結末とは、本当にミシェルにとっての〝破滅〟であるのか。

 人間の美醜と幸福の定義について考えさせられる、極上のホラーファンタジーをご覧あれ!

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