異世界ファンタジー×探偵。この化学反応、一見の価値あり!

レイルスロー王国の貴族たちの間で噂になっている、とある「探偵」……その正体はダレン・オスカー。元侯爵家の次男で、現在は個人的功績により子爵を叙爵されている。

鋭い観察眼と推理力で探偵としての腕は超一流。それでいて甘いマスクに女性たちは皆虜……かと思いきや、叔母(本人を前にして言うのは憚られる)兼助手であるキャロルが良い具合に彼の人間らしさを読者にも提供してくれて、さらに魅力的な主人公に仕上がっている。

そんなダレンの元に王女直々に届いた依頼は、「子供の神隠し」の解明である。人身売買が疑われる重大事件だ。
ダレンはその観察眼と周囲の協力により事件の真相に一歩ずつ近づいていくのだが、この事件の鍵を握る少年少女たちの秘密が、世界観の奥行きをぐっと広げている。
「剣と魔法の異世界ファンタジー」ではないが、私たちが日々嗜む物語で馴染みのある要素が綿密に織り込まれた様子は、上質さすら感じた。そこで生きるダレンたちの躍動と、悪役たちの暗躍。ファンタジー世界で繰り広げられる事件に、不思議な親近感を抱いてしまう。

王道ではないのかもしれない。それでも「異世界ファンタジー」だからこそ描ける新たな探偵物として、この一作を推したい。ぜひ、ご一読あれ!

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