高校

 先日、お隣さんもとい大人気漫画家のアネモネさんもとい飯野花蓮さんとの交流の果て。

 僕が料理を作る代わりに飯野さんが僕の小説を見てくれることになった次の日。

 

 当然のことながら僕は高校生として高校へと通っていた。

 昨日は日曜日だったのだ……クソ、なんで昨日は土曜日じゃなかったんだ。そうだった今日も飯野さんと入れたというのに。

 なんて運命は残酷なんだ……。


 ちなみにではあるが、僕が高校に行っている間に飯野さんが自分の小説を読んでくれると話してくれている。

 本当に女神みたいな人だぁ……。


「おはよ、蓮」


 そんなことを考えながら学校でもPCを開いて小説を書いた僕へと友達が話しかけてくる。


「どうですかい?小説の進捗は」


「完璧よ」

 

 僕は聞かれたことに答えながら、小説を上書き保存した後にPCをを閉じて声をかけた男子の方へと視線を送る。

 そこにいたのは背が高めのちょいイカつめの男子、僕のベストフレンドである増宮春樹である。

 ちなみにそこそこモテる……許されない。血祭りに上げられるべき人種である。


「ええやんかー」


 僕の隣へと席を降ろした

 ちなみに春樹は僕の隣の席だ。

 え?普通は男子と女子が席が隣なんじゃないかって……?うちのクラスは毎日席替え制。先に来たやつから好きに席を選べるルールとなっている。


「今日何かあったけ?」


「……何もない、が。体育がある」


「あぁ、体育か」


 僕の言葉に春樹が頷く。


「あぁ!じゃないよ!あぁ、じゃあ!体育なんてクソだ!クソッタレだ!」


「おうおう。ヘイト高いな。何かあったか?」


「体育に関しては割と本気で狂気の沙汰だと思っているよ、僕は。体格差を無視して全員まとめて一緒くたにして運動させるなんて狂気の沙汰。何が怪我に気をつけて、だよ!準備運動だとか些細なクソルールとかの前にまずはそこらへん考えろや。体格差を、体格差よぉ」


 僕は不満たらたらという態度で口を開く。

 毎日小説を書いているようなインドア、それこそが僕である。なおかつチビ。

 チビもやしの僕を体育の授業で野球部とかのゴリマッチョと一緒にさせるとかどう考えても正気の沙汰ではない。


「それはしょうがないだろ。学校は全員同じの教育をしなきゃいけないんだよ。そういう施設なんだ。しょうがない……しょうがないんだ」


「クソぉ、お前が体デカくて強そうだからって上から見下ろしやがってぇ。こちとら死活問題だぞ。というか普通に考えて怪我云々の前に身体能力も体格もクソ雑魚な僕に出来ることなどない。ただ何もない。ただ足を引っ張るだけ……最悪やぁ」


 そんなチビもやしである僕とは違って春樹はしっかりと筋力のある運動部……見ているものが何もかも違う。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 僕は体を机へと倒してうめき声を上げる。


「いややぁ、学校。本当に学校が嫌だぁ」


「そこまで行ったか」


 普段であればここまで擦れてなどいない。だが、今日に限っては別だ。僕のお家にはあの伝説の人気漫画家、アネモネさんこと飯野さんがいるんだぞ?

 それなのに学校なんて……非常にもったいないことをしているとしか思えない。


「それで?何を……どう、はぁー」


 僕はぶつぶつと文句を告げる。


「おーい」

 

 そんなタイミングでクラスの扉を開けて担任の先生が教室の中へと入ってくる。


 キンコンカンコン、キンコンカンコン。


 それと同タイミングで放送室からHRの開始を知らせるチャイムが学校全体に響き渡る。


「おっ?ベストタイムじゃないか。全員早く席につけー」


 教卓の前に立つ無精ひげを生やした先生とは思えない汚い面をしている先生が口を開く。


「HR始めるぞー」


 あんな成りでも生徒からの評価どころか、保護者からの評価まで高い奇跡のような僕たちの担任、松金先生がみんなに告げるのだった。

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