お願い
「あぁ、それと小説を終わらせるのが自分は苦手なんですけど……どうすれば良いですかね?」
「割と自分の好きなようにしていいと思うわよ?終わりなんて大体賛否は起こるんだからそこまで細かく考えることはないわ。それで、終わらせる際の基本的事項だけど、その小説にテーマがあった場合はそのテーマとなる課題が解決され、それによって主人公がどうなったのかを描くことね。これが一番簡単……で、問題は課題が無いような作品、キャラ先行で無限に続けられる日常ものとかになってきた場合は……」
金出しても全然売れるような創作論。
「なるほど……」
飯野さんの口より語られる創作におけるアドバイスに耳を傾けていく。
「って、やばっ!?」
そんな中で、チラリと視界に映った時計を確認した僕は大きな声をあげる。
「えっ、えっ……?ど、どうしたのぉ?」
「いや、熱中しすぎました……そろそろ夜ご飯作らないと」
熱中しすぎていたせいで既に時刻は20:00を回っている。
このままじゃ夜ご飯が際限なく遅くなってしまう。
「あっ、ごめんなさい……調子に乗っちゃいました……」
「いやいや!?こちらは大助かりですから全然大丈夫だよ」
「そ、そう……?それなら良いんだけど……」
「そうそう。全然良いよ。ということで、ご飯作ってくるからちょっと待っててね」
「あ、あの……少し待ってくれる?」
「ん?」
キッチンへと向かおうとしていた僕は飯野さんの言葉を受けて足を止める。
「えっと、……今、私の家ってば酷いことになってて」
「え!?あれだけ掃除をしたのに!?」
ほぼ丸一日かけて掃除を終えたのにまた酷いことになったのか?たった一日未満で???
「その、私の家ってば今……ゴキブリの死骸が転がっていて……その、まだ片付け出来ていないし、かと言ってゴキブリと生を共にしたくないし……」
「いや、片付けてよ」
なるほどと納得はしたが、それはそれとして片付けろよとも思う。
「……もう、時間もだし……何より、なんかゴキブリとか、死んでいる虫の数がなんかもう百は軽く超えてて!」
「……えっ?」
飯野さんのその言葉に、驚愕しつつも納得する。
確かにあの酷さであればそうなるだろう。
卵もいっぱいあるだろうから定期的に焚かないとな……にしてもそうかぁ。百を超えているのかぁ。一体、なんていう地獄絵図だろうか。
「と、と、ということで、さ……今日、出来れば泊めてくれない?」
「……はぁ?」
飯野さんの言葉に、彼女の想定外の着地の仕方に僕は困惑のままに声を上げるのだった。
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