帰宅
「なぁなぁ、蓮の家行って良い?」
「全然余裕で駄目だが?」
僕は自分の元へとやってくる和葉の言葉を真顔で断る。
今ごろ僕の部屋は飯野さんが作業をしているところのはずなんだ。そんなオアシスにギャルを入れるわけにはいかない。
というより飯野さんはバリバリに陰キャ寄り……というよりも僕より陰キャコミュ障に近い子だ。
ギャルなんてものと引き合わせたら対消滅しかねない。
「えぇー!良いじゃん!見られたら困るものでもあるのぉー?」
「僕はきれい好きなんだよ。ロッカーが汚い和葉を家の中に入れたくない。僕のオアシスだぞ?」
「あー!言っちゃいけないこと言ったねぇ?というか女の子の部屋がきれいだなんてただの男子の幻想。実際はちゃんと汚いんだから……ねぇ?これが普通。私のくらいが普通だから!あと、女の子のロッカーの中身を勝手に見ないでね?セクハラだよ!セクハラ」
「別にそんな幻想を見ていないけど」
飯野さんの部屋を見て幻想をいだける人間がいるのならば見てみたいくらいだ。
「単純に僕がきれい好きでNGなだけ。わかる?」
「ほー、そんな部屋がきれいだというのなら見せてもらおうじゃないですか!」
「……料理のくだりである程度わかってくれたのでは?」
僕はそんなことを言いながらスマホを取り出して和葉へと自分の家の写真を見せる。
「……えっ、きれ……えっ!?きれい!?」
僕の部屋の写真を見た和葉が驚愕の声を上げる。
「……えぇ?本当に男子?」
「まごうことなき男子ですが」
僕以上の男子などこの世界に存在しないだろう。
ちゃんと下のほうもついているし、インタネットで下ネタ込みの小説を出すくらいには男子である。
ちゃんと男子なのである……あれ?ということは飯野さんに僕の下ネタつきの小説を今読ませていることに……?
って、まぁ良いか。飯野さんの漫画にも出てくるし。下ネタ。
「ということで僕が一人で帰って、一人で優雅な放課後を過ごすので……後はお好きなように」
「もぉー。せっかく蓮の部屋に遊びに行きたかったのにぃ」
「ロッカーをきれいにしてから出直してくるんだな」
「……ふぇー」
僕の言葉に対して和葉は不満げに声を上げる。
「ということでそんじゃあ!さいならぁ!」
「はーい。さよならぁ」
不満そうにしている和葉と僕は別れて自分の帰路へとつくのだった。
■■■■■
電車に乗り、二駅超えて家へと帰ってきた僕は既に空いている玄関の扉を開いて
ちなみに高校も僕の家も駅チカであるため、登下校は非常に楽である。
「ただいまぁ」
「あっ!おかえりぃ!」
いつもとは違う、僕の家に漂う誰かの匂い……臭い匂いではなく、甘い女性の匂いがする自分の家へと帰った来た僕はいつも通り玄関で靴を脱いで鍵を玄関の棚に置いてから廊下へと足を踏み入れる。
「帰ってきたよぉ」
一度、自分の部屋に寄って制服から私服へと着替えてきた僕はリビングの方へと足を踏み入れる。
「……うぅ、お腹空いたぁ」
そこで待っていたのはお腹を空かせてソファに倒れている飯野さんであった。
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