お隣に大人気漫画家が引っ越してきた件~メディア露出時にはクールでカッコいいとても美人な人気漫画家なのにプライベートではとんでもなくずぼらだったんだったんだけど!?~
リヒト
序章
プロローグ
発行部数1000万部超え。
現在、アニメも放送されてその人気も更に飛躍、未だ一期が放送中なのにも関わらず二期の製作と映画化まで決まっている超人気漫画を手掛ける売れっ子漫画家。
顔出しありでメディア露出すれば、たちまちその圧倒的な美貌で多くの男性を虜にし、高身長でスーツ姿、カッコいい出来る女性としての姿から多くの女性すらも虜にしてしまう完璧超人。
そんな一大ムーブメントを引き起こす大人気漫画家こそがペンネーム『アネモネ』、その本名を飯野花蓮。
「もー!僕が修学旅行に行っている間だけでこんなに汚くなります!?たった三日だよ?居なかったの!」
「え、えへへ……いつも蓮くんに任せきりになっちゃっていることもあっていつの間に私のズボラレベルがカンストしちゃってて……」
「僕が来る前からもうカンストしていると思うよ!?」
そんな彼女は今、自分よりも一回り年の低い男子高校生から正座で説教されている最中であった。
「もー、あのメディアでの姿はどこに行っているの?」
多くの女性を魅了する出来る女性像。
そんな女性像は一体どこに行ってしまったのか……花蓮の家の中はごちゃごちゃの汚部屋。テーブルの上にはカップラーメンのゴミとビールの空き缶が散乱し、床には脱ぎ捨てた服や鼻水が噛まれたティッシュなどのゴミが転がっている。
そして、倒されて悲惨な様相を晒しているオシャレな照明にこれまた倒されたガラスの破片へと成り果てたグラス。
それはもうひっどい有様であった。
「……プラスチックに買い替えるか」
こんな様相を見れば誰もが見れば、メディアでの花蓮を知っているものならば誰であっても面食らうであろう。
だが、それでも少年は一切面食らったりはしない。
何故なら花蓮のこれ以下の部屋を知っているからだ……隣の部屋にまで異臭を漂わせるほどのゴミ屋敷を生み出す花蓮の姿を。
だが、それでも少年は驚いている。
何故なら三日前。
自身が高校のイベントである修学旅行に行く前はちゃんと綺麗に整理整頓していたはずの部屋が短い時間でひっどい有様に変貌しているのだ。
驚きもする。
「そ、そうしてくれると助かるかもぉ……」
ガラス片を見ながらぽつりとつぶやいた少年の言葉に
「これを最初に買ったのは花蓮さんですけどね?」
「えへへ」
盛大にガラス片を散らしてそのまま放置した花蓮は目の前に仁王立ちする少年の言葉にそっと視線を外して笑顔で誤魔化す。
「はぁ……あとさ」
少年は花蓮の方に近づいてそっと彼女の腰にまで伸びた黒い髪を手に取る。
「な、何かな!?」
「……ちょっと臭いよ」
そして、そのまま髪の毛の匂いを嗅いだ少年はぼそりと一言。
「……ッ!?!?」
その一言を聞いた花蓮は慌てて地面を転がりながら少年の元から離れていく。
「な、な、な、何を言ってぇ!?」
「言葉通りの意味だけど?お風呂の入ったのいつ?」
「た、確かにお風呂に入るの忘れていたような気もするけど……それでもこの三日間はコンビニに出掛けていないし、そんなに臭いはずが!」
少年の言葉に花蓮は全力で言い訳を口にするが……普通に考えてアウトである。だって三日お風呂に入っていないのだから。
「三日って長いからね?それに、夏なんだし……いつもの花蓮さんの服装でコンビニ行ったら普通に汗かいて臭くなるに決まっているじゃん……廊下にあった三日間履いていた靴下もひどかったよ?というか、そもそも寝ているときも汗かくから、普通に激臭よ?」
当然の如く少年は花蓮にゴミを見るような視線を向けながら淡々と言葉を並べていく。
「あわわわわわわ」
少年の言葉にぐさぐさと刺される花蓮は体を震わせながらどんどん後ずさっていく。
「お風呂入ってきなよ、入ってないってことは三日前の状態が残っているでしょ?早く行ってきな」
「行ってくる!」
慌てて立ち上がった花蓮は仁王立ちしていた少年の隣を通り抜けて、お風呂に向かって走っていく。
「……んんっ」
地味に花蓮の臭い匂いも嫌いではない少年……土御門蓮は少しだけ頬を赤らめながら、お風呂へと走る花蓮を見送る。
「はぁー、もぉー」
そしてちょっとだけ嬉しそうに頬を緩ませながら蓮は床に散らばっているガラス片などを掃除していく。
「……ごめん、服を忘れちゃって」
しばらくの間、テキパキと汚部屋を綺麗にしていた蓮へとお風呂から上がった花蓮が声をかける。
「……ッ!?!?」
めちゃくちゃ小さなタオルだけで体の本当に大切なところだけを隠して抜群のプロモーションを、不摂生な生活からは感じられないほどのくびれとムチムチで色っぽい太もも、大事な二点だけが隠された突き出るHカップの胸をふんだんに見せつける花蓮が。
「その服……」
「何しているの!?馬鹿なの!?」
花蓮のほぼ全裸と言って良い姿を目の前とする蓮は絶叫する。
「とりあえず服着ろ!」
そして、適当に地面へと転がっていた服を手に取ったは全力で服を投げつけてそのまま赤くなる顔を隠すために背を向けるのだった。
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