大人気漫画家と小説家志望
引っ越し
煩わしい学校生活が一週間も終わり、土曜日。
「あー!笑いが止まらねぇぇぇぇぇぇ!PVが跳ね上がるぅ!三日で三千PV、一週間で三万PV。最高だぜぇー」
僕は自分が小説投稿サイト『カクヨム』で投稿している自分の作品が爆伸びしていることに歓喜の声を上げる。
「これなら総合週間ランキング一位も夢じゃない……!まぁ、だから何だという話ではあるけど……うし、これで誤字脱字修正完了っと」
無限に湧いて出てくる誤字脱字報告を直し終えた僕は自分の小遣いで買った椅子から立ち上がって大きく背筋を伸ばす。
「……喉乾いた」
のそのそと自分の部屋からキッチンへと移動した僕は冷蔵庫を開けて中を確認する。
「あー、何の飲み物もないじゃん……最悪、昨日作り忘れていたんだ」
仕事の関係で両親が海外の方へと飛んでいる今、自分がお茶を作り忘れれば飲み物はない。
「ウォーターサーバーの水は飲み切っているし……水道水は何かなぁ。買いに行くか、飲み物」
ぶつぶつと独り言を漏らしながら外出のための準備を進めていく。
というか、誰もいない一人暮らしの人は独り言が多くなる……これ、あるあるだと思っているんだけど他の人はどうなんだろうか?ちょっとアンケート取ってみてからkauTubeのショートにあげよ。
「行ってきます」
誰も居ないのに行ってきますとただいまを欠かさないのもあるあるだと思う。
そんなことを考えながら家の戸締りをしっかりしてからコンビニに向かうべく廊下へと足を踏み出す。
「……ん?」
そんな僕の目に映ったのは自分の部屋の隣で引っ越し作業をしている引っ越し業者であった。
「とうとう僕の隣にも人かぁ……壁厚いから大丈夫だとは思うけど近所付き合いとか面倒だなぁ」
これまで僕の両隣には誰も住んでいなかった。
おかげで一切の近所付き合いなしで何とかなっていたのだが、新しく人が来るのであれば別であろう。
「良い人だといいんだけど」
僕はそんなことを思いながらコンビニへと向かうのであった。
■■■■■
隣の部屋で引っ越し作業が行われていたのはどれくらい前だっただろうか……?今、総合週間ランキング一位になっている作品を投稿し始めの時期だったから一か月ほど前だったかな?いやぁー、あの頃に狂気乱舞していた作品がまさか本当に一位になれるなんて……。
「さて……と」
現実逃避はこの辺りで良いだろう……というか、この辺りにしておいて方が良いだろう。
「すっごく臭いんだけど」
ちょっとだけ小腹が空いたから軽食を求めてコンビニへと向かうべく廊下を出た僕の鼻腔をくすぐる激臭。
引っ越しの挨拶とかもなく、外出していたり人の出入りがいしている様子がなかったこともあって完全にその存在を忘れていたお隣さんが暮らしている隣の部屋から廊下からでも匂うほどの激臭を前僕は眉を顰める。
「……流石に放置は不味いか」
感じる激臭に湧いているコバエ。
流石に引っ越して一か月でご遺体が放置されているなんてことはないと思うが……それでも放置しておいて良いものではないだろう。
「はぁー」
僕は小さくため息を漏らしながらお隣さんのチャイムを鳴らす。
あんまりうるさいお隣だと思われたくはないんだけど……流石にここまでの激臭を放っているのは辞めて欲しいよなぁ。
『はーい』
僕がチャイムを鳴らしてからしばらく。
数分ほどの時間が流れた後にインターホンから声が返ってくる。その声はどこかで聞いたことのある気もする若い女性であった。
「すみま」
『って、あっ!?きゃぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!?……ちょ、たすけ?!』
「大丈夫ですか!?」
通話の繋がったインターホンに向けた僕の返答……それが言い終わるよりも前にインターホンの方から大きな悲鳴が聞こえてくる。
「……空いている」
それに対して思わず手を伸ばしてしまったドアノブ。
そして、鍵がかけられていなかったそれはいともたやすく開いてしまった。
「……入りますよぉー」
入るか入らないか……悩んだ末に先ほどの悲鳴のことや事件性のことも考えてゆっくりと玄関の扉を開くことを決意する。
護身用の警棒はちゃんと持っているよな……?よし、ある。
「は?」
玄関の扉を開いた僕はその中の様相に呆然と言葉を漏らす。
玄関に散らばっている多くの服に廊下に転がっているトイレットペーパーの芯や赤い謎の袋のようなもの。
そして、どこの扉も閉じられていない廊下からはリビングまでの様子を確認出来るのだが、そこにあるのはただひたすらにゴミの山である。
ちゃんと袋に入っているものもあるが、辺りに散乱しているものも多い。
「……」
僕は廊下にある赤い染み……ゴミ山にとんでもない腐乱臭に赤い染み。
おやおや?とか内心で思いながら僕はゆっくりと慎重に……なんで靴を抜いだのだろうかとか思いながらスマホを片手に進んでいく。
「たす、けて……」
緊張の面持ちでゴミが散らばって足の踏み場もないような場所を通りながらリビングにまでやってきた僕の目に映ったのは大量の段ボールの下敷きになって手を伸ばしている女性の姿であった。
あとがき
ちなみに本作の二行目に出てきたPV数は実際に僕が総合ランキング一位を取ったときのPV数です。参考にしてね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます