第13話 血の定め
ヘレーネの父親、ユーラシア連盟の皇帝、聖アントニヌス・ピエダリウス・クリスタルが言うには、
『藤原優斗こそ真なる王』
だという。
「優斗くん。娘のヘレーネをよろしく頼むぞ」
「は、はい!」
「それよりパパ。なんで他に誰もいないの! いつもは大層な兵隊さんとか、小難しい宰相とか大臣とか!」
「それはだな」
聖アントニヌス・ピエダリウス・クリスタルが語るには、これから三人を案内する場所が、代々王位を継ぐものにしか知ることは許されないとされる秘密の場所だからだという。
「ならば一般人の俺や月人のソフィアは?」
「無論である。本来ならばこの玉座の間の先にあるゲートを潜ることは国王以外に許されたことは無い。だが、今は休戦宣言をしているな? あれは何故だと思う?」
「何故? 」
「私は、てっきり月人の前線基地を一つ破壊したからなど、と思ってました」
「そうだな。月と地球は古来より戦争をしておる。じゃが今ここにいるのは地球人の少年と地球の王女、月の王女」
聖アントニヌスはなかなか答えを教えてくれない。だから俺は迫った。
「月の王女、ユーラシア連盟の姫なら分かるんですが、何故俺なんですか? 俺は何の変哲もないただの一般人ですよ」
「優斗くん。君がもし真なる王たる資格を持つのなら、君の家には変わった家訓があるんじゃないかな」
え?
まさか、ヘレーネの父親たる聖アントニヌスは俺の家の家訓を知っている?
「藤原優斗、否、ナギ・ソフィア・ユニバース様。今の今までご苦労さまでございました」
急にヘレーネの父親は俺に向かってお辞儀をした。それも貴族などが習う特別な作法で。
「パパ? 一体どういうことなの?」
「ヘレーネよ。実はな、我々ユーラシア連盟及びアフリカ連盟、アメリカ連盟などなどの諸連盟に唯一日本は所属していないだろう。その理由がわかるか?」
「分かりません」
「そうか。今から語るのは地球の真実の話だ。そして、ここにいる三人になら話しても良いと私は考えている」
「地球の真実?」
「そうだ。月と地球にまつわる物語が今終わりを迎えようとしているんだ」
ヘレーネのお父さんは先程から真剣な眼差しで応えている。なので、その言は真実なのだろう。
「ここで世界の真実をひとつ教える。地球がユーラシア連盟、アフリカ連盟、南アメリカ連盟、北アメリカ連盟に分かれたのに、何故日本はそこに組みさなかったか。それは正しく日本において人類の真祖から血を引く家系を守る為であったのだ」
「真祖?」
「ああ、そしてその家系こそが藤原家であるのだ」
「まさか、本当なの?」
「いや、俺の家がそんな!」
「たが、変な家訓はなかったかな?」
「あ、そういえば、今は亡きお父さんからもおじいちゃんおばあちゃんからも
『「男の子が産まれるまで腰を振れ。二股までならしてもいい」』
って言われて育てられてきたような」
「優斗、本当なのそれ!」
するとソフィアが告げた。
「その家訓、まるで藤原家の遺伝子を、それも男にしかないY染色体を守ろうとする家訓ですね」
人類含めて動物には様々な染色体がある。だが、人間の男女を決める染色体はXYのふたつある。XXが女性、XYが男性なのだ。古来より日本の天皇家も男性天皇を優位にしていたのはこのためである。
「そうなんだよ。要するに、 地球の、いや、月の人類の祖の血が藤原優斗くんに流れているんだ」
「地球と月の祖?」
「そうだ。そして、今から答え合わせのために、月へと向かおう」
「まさか、ロケットに乗るの?」
「いや、そんな旧時代的なことはしない。先史文明が残したゲートを使う」
「先史文明?」
「ああ。もともと月人から人類は始まった。地球で習う世界史は嘘ばかりだ。まぁ、よい、ついてきなさい」
聖アントニヌスはそう告げると、玉座の間の後方の壁に手を当てた。すると忽ちに扉が現れ、道が開かれた。
「さぁ、三人とも。付いてきなさい」
俺とヘレーネ、ソフィアはヘレーネのお父さんに従わざるを得なかった。そして、俺は自分自身の血に特別な血がながれている、というほのめかしに内心ワクワクどきどきしていた。
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