第6話 遊園地デート
土曜日の今日は俺とヘレーネとソフィアで遊園地に来ていた。というのも、色んな場所に行けば何かがキッカケになってソフィアが自分のことを思い出すのではないかと考えたからだ。
「どこ行く?」
「私はブルーマウンテン行きたい」
「私は観覧車がいい」
激しめのアトラクションが好みのヘレーネと、大人しめのアトラクションが好みのソフィア。こりゃ、二人の要望を叶えるのは難しそうだ。
「とりあえず観覧車から行こうか」
「ソフィア。観覧車乗ったことある?」
「たぶん。観覧車の記憶はある。いつ乗ったかは思い出せない」
「そっか」
観覧車の券を人数分買い、列に並んでいると、周りから、ちらほらと視線を感じた。なんの視線だろうと見ていると、どうやらソフィアやヘレーネを男たちが見ているみたいだった。
彼女連れの男もヘレーネやソフィアを見る。やはり、二人の美貌はかなり優れているのだろう。
順番がやってきて、観覧車に座る。ヘレーネが最初に席に座って「優斗、隣来て」と言う。仕方なく俺はヘレーネの隣に座った。ソフィアは無言で向かいの席に座る。
ソフィアは窓から外の景色を眺めていた。じっと、大人しく。一方ヘレーネは俺の手を握っては、「高いわね!」とはしゃいでいる。
「ソフィア。何か思い出せそう?」
「いいえ」
俺がソフィアに訊くも、手応え無しだったようだ。
「なら、次はブルーマウンテンに行きましょ」
ヘレーネの要望で、絶叫系アトラクションに乗ることになった。が、ソフィアは遠慮するという。ソフィアには近場で待ってもらうことにした。
「なら、ソフィアはここで待ってて」
「はい」
こうしてヘレーネと俺でブルーマウンテンの券を買い、列に並ぶ。
「ワクワクするわね」
「絶叫系好きなの?」
「ええ。非日常感が味わえるからね」
皇室の姫でも非日常感という感覚があるんだな、と俺は学んだ。
「遊園地はよく来るの?」
「たまに、国の催しで」
「なら、一般の客としては初めて?」
「そうなの。だから楽しみにしてたのよ!」
「最前列の方から前の座席からお乗り下さい」
俺とヘレーネが話していると、どうやら番が回ってきたみたいだ。俺とヘレーネは一番前の座席に座った。座席が二人がけだから、ちょうど良かった。
「では、行ってらっしゃいませ! 地底湖の旅へ!」
ブルーマウンテンは火山の中の地底湖を巡る絶叫系アトラクションのジェットコースターだ。俺は細部まで細かく作り込まれている世界に感動しつつ、急にホールに落ちるような浮遊感に恐怖を感じて力んだ。
ヘレーネは大丈夫だろうか。
「あー!楽しかったわね!」
ヘレーネは平気そうだ。
「そうだな。特に地底湖の世界観が引き込まれる」
「世界観も確かに良かったね。それじゃあソフィアと合流しましょう」
ブルーマウンテンを終えた俺とヘレーネはソフィアとの約束の場所に向かった。しかし、そこにはソフィアと、ソフィアを取り囲む三人の男がいた。
「ねぇ、俺たちと回ろうぜ」
「結構です」
「お姉さん。彼氏とかいるの?」
「はい」
「でも、今居ないよね」
「待ってるんです」
「こんなに可愛い彼女を置いてくような奴より、俺たちと遊ばない?」
ソフィアはナンパされていた。三人の男達はみんなチャラそうで、ソフィアは嫌がっていた。だから、俺は話しかけようとした。その瞬間のことだった。
「グアッ!」
ヘレーネが一人に飛び蹴りをした。そして、ソフィアの前に立ち、男たちから守ろうとした。
「あのねぇ、私たちをナンパするなら、それなりの顔、身長、身分、そして性格が必要なの。あなた達のような野蛮な男は論外よ、さっさと失せなさい!」
だが、ナンパ男たちはあとを引こうとしない。
「おいおい、今度は巨乳の美少女かよ」
「二人とも持ち帰ろうぜ」
「ああ、そうしよう」
俺はその瞬間強い怒りを抱いた。藤原家に流れる血のせいかもしれない。俺は普段では出せない身体能力を用いて、ナンパ師の二人の胸ぐらを掴んで体を持ち上げた。
「この二人は俺の女だ。手を出したらしばくぞ」
残りの一人は慄いて去っていった。俺は胸ぐらを掴んだ二人を放り投げる。尻もちをついた二人は、そそくさと去っていった。
「優斗ってケンカ強いのね」
「それを言うならヘレーネだって」
「そうかな」
「そうだよ。ソフィア、平気だった?」
「私は問題ありません」
「なら、良かった。これからは三人で回ろうな」
その後も俺たちは遊園地を満喫した。日も沈み家に帰る頃、ヘレーネは遊園地にリムジンを呼んだ。そして、我が家へと帰る。
今日の反省。ヘレーネもソフィアもめちゃくちゃ美人だし、二人とも胸もあってスタイルもいい。ナンパ野郎から守らねば。
なんて考えながら風呂に浸かっていると、なんとソフィアが入ってきた。白髪碧眼。アルビノのようなその姿は幻想的な美しさを保っている。
「ソフィア? 俺、入ってるけど」
「いいの」
そう言って黙々と体を洗い始めるソフィア。俺はこの際だから聞いておく。
「ソフィア。今日、何か思い出せた?」
「いいえ」
「そうか。これからも思い出せるように頑張ろう」
「うん」
その後俺とソフィアを追うようにヘレーネが風呂に入ってきて、「二人だけはずるい」とか何とか言っていた。
二人の妖艶な体をチョロチョロ見つつ、そっからは風呂を出て歯を磨いて、寝る。
寝る前に想起する。俺は火事場の馬鹿力なのか、ソフィアとヘレーネを守ろうとした時に急に体が火照って力が出た。
あれは、一体何だったんだろうか。
とにかく明日はソフィアのために戸籍を作る日だ。俺は自分の部屋で寝ていたが、何故か部屋がノックされた。
ドアの先にいたのはヘレーネとソフィアだった。
「三人で寝ない?」
「お、おう。いいよ」
ヘレーネ、俺、ソフィアというように、俺が挟まれる形で寝ることになった。ヘレーネは自身の胸を俺の右腕に当てる。ソフィアは軽く服を掴んで眠る。
こんな至福は、100人目に振られて、おじいちゃんが死んだ日には思いもよらなかっただろう。
俺はこの二人を大切にしようと心に決め、眠るのだった。
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