第2話 皇室の姫
「あの、私と付き合ってくれませんか?」
俺は今、学校の屋上にて人生初の告白を受けている。え、なんで?
「え、俺ですか?」
だが、俺はイマイチ状況が整理出来ていない。というのもこの少女、最近転入してきたばかりなのだ。しかも。
「はい。藤原優斗さん。私はあなたに会うために日本に来ました」
「と言われましても......。あ、お誘いは嬉しいです」
「なら、付き合ってくれますね!」
「いや、は、はい。よろしくお願いします」
5/21。この日、俺の運命の歯車は大きく揺らいだ。俺が今日付き合った完璧北欧美少女は、旧ヨーロッパや旧ロシア、旧中国などユーラシア大陸を統べるユーラシア連盟の皇室の姫、ヘレーネ・ルイス・クリスタルその人であったのだ。容姿端麗。特にサファイアに煌めく瞳やブロンドの長髪がとても美しいと言われている。
何故、そんな高貴な人が俺に?
その謎に心当たりがあるんだなこれが。
《数日前》
「あら、下界はこんなにも栄えたのね」
「ヘラ。あなた太ったんじゃない? そのスカートキツキツよ」
「そういうアテナこそ、筋肉付き過ぎてないかしら。男は多少ふくよかな体型の方が好むそうよ」
「ふふふ。アテナ、ヘラ。今回の『三美神だれが一番美しいか審判』は私の勝ちのようね」
なんか、いつもみたいに登校してたら、目の前から海外のセレブかよ、みたいな三人が日本語で話しながら歩いてきた。俺はできるだけ顔を合わせないように通り過ぎようとしたんだ。
「あ、男発見。あの子でいいわよね?」
「そうね。下界に降りて一番最初に見つけた男の子にしようって決めてたもの」
その外国人セレブたちは嬉々として、急に俺を囲み始めた。
「ノー。プリーズ、ノーセンキュー」
俺は懸命に赤点ギリギリの英語力で応対したのだが「あ、日本語で平気よ」と言われ、素知らぬ振りをすることが出来なくなってしまった。
「私たち美しいでしょ?」
「あ、はい。美しいです......が、これって何かのドッキリとかですか?」
「ドッキリ? まさか」
「とりあえず、私はアフロディーテ、この人はアテナ、この人はヘラ。私たち3人の中で誰が一番美しい?」
俺は3人の女性を見比べる。アテナと言われた女性は肉体派なのか強そう。ヘラと言われた女性は確かにふくよかな体型はしているが贅肉もあった。
「アフロディーテさんかな」
「え、私! 嬉しい!」
この三択なら、金髪碧眼でスタイル抜群のアフロディーテさんを選ばざるを得ないだろ。と思っていると、ヘラ、アテナと呼ばれた二人は不服そうな顔をしながら、去っていった。
「今回はアフロディーテの勝ちね」
「仕方ないわね。また天界で会いましょう」
普通に歩いて去っていったヘラとアテナ。唯一残ったアフロディーテは俺にこう言った。
「私を選んでくれた代わりに、あなたには世界で一番美しい乙女を授けるわ」
《回想終了》
あ、あれだ。
絶対あれだ。
いや、でも神様なんて本当にいるのか?
だが、実際ヘレーネ様と付き合えるんだよな。だって向こうから告白してきた訳だから。
忌引き明けで学校に行ったら、机の中に呼び出しの紙が入ってて、昼休みに屋上に来たら、ヘレーネ・ルイス・クリスタルその人がいた。
屋上は本来鍵がかかっていて入れないはずなのだが、何故かその鍵をヘレーネは持っていた。きっと権力に任せたのだろうが。
「教室に戻りましょう」
「そうですね。戻りましょう」
屋上から帰る道中、学年中の男女が俺たちのことをドアの隙間やら廊下の壁沿いやらで見ていた。ヘレーネは急に立ち止まると宣言した。
「藤原優斗は今日より、私、ヘレーネ・ルイス・クリスタルの夫です! 女生徒と皆さんはくれぐれも藤原優斗と接触なきように」
もしかして、ヘレーネさん、束縛するのか。まぁ、それだけ愛が強いってことなのだろうか。なら、昨日の帰還兵の少女やばくね? キスしちゃったで。
そもそも女神アフロディーテが決めたことじゃないのか? だとしたらヘレーネの恋心も偽りとなる。だが、聞くに聞けない。
その後教室に戻ると、ゴローが駆け寄ってきた。
「お前、やるじゃん! ユーラシア連盟の姫だぞ! これ以上ない最高な女性じゃないか」
「そうだけどさ。なんか腑に落ちなくて」
「腑に落ちない?」
「ああ、だって俺100人に振られるくらいイケテない男ってことだろ。それなのにユーラシア連盟の姫が転入して告白だなんて。実は信じ難いんだよね」
「そっか、まだお前知らないんだ」
「え、なにを?」
「入学時に女生徒全員に『藤原優斗との恋愛を禁ずる』っていう書類が配られたらしいよ。しかも女生徒だけで男子生徒には一切連絡なし」
「え、なにそれ」
「要は、ユーラシア連盟が後ろでなにかしてたんだよ。ほら、ヘレーネ様が来た時、優斗が付き合えるように。ってそろそろ午後の授業始まるぞ」
「おう。体育だったっけ」
「そうだな。着替えるか」
「ねぇ、優斗。来て」
俺とゴローが話して着替え始めようとしていたら、ヘレーネ様が現れた。
「どうしたんですか、ヘレーネ様」
「様はつけなくていいですよ。それより専用の更衣室作ったので、私と優斗はそこで着替えます」
「はい?」
体操着を持ってヘレーネについていくとそこは空き教室の1つだった。ヘレーネは着くなり俺に向き合って一言。
「服、一人でできないから、よろしく」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます