第9話 ソフィアの謎
診察を受けることになったソフィア。俺はその間風呂に入る。というのもヘレーネがソフィアに同伴するらしい。
ソフィアに別れを告げ、俺は念願のお風呂に入ることになった。ここの風呂は広くて画期的で、好きな音楽を流せる音響設備もある。動画サイトの『クラシック音楽』からお気に入りのものを流して、至福の時に浸る。至高体験とはこのような経験のことなのだろうか。
そして、悠久の時が流れる。
「優斗、おそい! 診察終わったし、もうピザ来てるわよ!」
ヘレーネがお風呂のドアを開けて声を張った。
お風呂から出て、寝まきに着替えて、リビングへの扉を開けると、急に食欲をそそられるピザの香りがした。ソフィアは俺の分のピザを取って待っていてくれた。
「さぁ。みんなで食べましょう」
食後、今日はもう遅いこともあり、俺たちは眠る準備をする。一人一部屋が割り振られ、夕食後は各々の部屋でのんびり過ごすことになった。俺が部屋で課題の英語を勉強していると、部屋の扉がノックされた。
ソフィアかヘレーネか。扉の前で待っていたのはヘレーネだった。
「部屋、入るわね」
ヘレーネはずかずかと部屋に入って来た。そして、俺がさっきまで座っていた勉強机の椅子に座った。
「一つ、重大な話をしに来たの」
「重大な話なら、ソフィアも呼ぶ?」
「いや、駄目ね。重大な話はソフィアに関することなの」
「え、それは」
ソフィアは確かに不審な点が多かった。帰還カプセルが民間領域に落ちたり、救助がすぐ来なかったり。まるで軍がソフィアのことを忘れているみたいな感じだ。そしてその予想は案の定的中した。
「顔認証でソフィアと思われる地球兵が存在しないことは前に話したでしょ? おかしいと思って、私はユーラシア連盟の暗部にソフィアのことを調べさせたのだけど、あまりにも情報が少なすぎたのよ」
「情報が少ない?」
「ええ。子どものころの写真、中学、高校での記録。大学進学やその後の履歴がまったく調べても出てこなかったの」
「てことは」
「月人のスパイの可能性がある。あくまで可能性の話だけど」
「でも、確かにソフィアは身長高くて色白。月人にも見えるかもしれない」
「今は記憶喪失だけど、もしかしたらスパイの可能性もある」
「でもさ、ヘレーネのお父さんの預言だと、ソフィアと上手くやっていかないと行けないんじゃないの」
「確かに言われてみればそうだったわね。とりあえず今日の、記憶喪失やその他の精神疾患を診るために診察の結果が出てからね」
「そうだね」
「ソフィアのこと、慎重に行きましょう」
そう言い終わると、ヘレーネは俺専用の部屋から去っていってしまった。だが、直ぐにまた戻ってきて一言。
「おやすみのキスは、しないの?」
「いいよ、しても」
「その言い方だと私だけがしたいみたいじゃん」
「わかった、わかったから。ヘレーネ、寝る前のおやすみのキスしたいです。してくれますか?」
「いいよ」
今までで1番長いキスをした。というのも、なんとヘレーネは舌を入れてきたからだった。まだ唇が触れ合う程度のキスしかしたことの無い俺は、上手くできているのかよく分からなかった。ただ、ヘレーネとしたディープキスはとても熱くてエロかった。舌の感触が柔らかく甘かった。
「ねぇ、私優斗の隣で寝たいんだけど」
「え、いいけど」
「なら決定! 隣で寝るね」
そう言うと何故かヘレーネは部屋を足早に出ていった。そして、巨大なジンベイザメの抱き枕を持ってきた。
「べぇちゃんだっけ」
この夜も、ジンベイザメのべぇちゃんこと抱き枕と俺の両方を抱き寄せようとするヘレーネに邪魔されて、あまり眠れなさそうだったので、リビングのソファに避難した。
ソフィアが月人か。確かにそれは否定できない。そんなことを考えながら夢の微睡みの中へと俺の意識は落ちていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます