主人公が3年間も通い続けた『のぞき部屋』パーテルノステル。
本文内では、冒頭から主人公の荒い鼻息まで感じられるような、少々淫靡な雰囲気で描写される。
金銭と時間を引き換えにして、興奮と愉悦を入手する主人公。
しかしある日、いつものぞいていた部屋に異変が起きて――
ぱっと見では、硬い文章に見えるかもしれません。
でもどんどん読み進めてしまう。
正確な状況説明と心理描写、この二点が上手に混ざり合っているからです。
たった1万文字弱なのに、非常に濃い内容。
それを最後まで読むと、作者のキャッチコピーに隠された意味を見つけることができるはずです。
分かってるって、あんたも何らかのフェチなんだろ? 乱歩の「人間椅子」「屋根裏の散歩者」、幼心にぐっと来たクチだろ? 別に責めてねえよ、心配するなって。あんたは普通だよ、相手に気付かれずに自分のものにしたいって欲望は、誰の心にもあるんだよ。そうだ、この小説読んでみろよ。推しに対する愛情とそれを邪魔する奴への殺意、自分だけじゃないってあんたは心底ほっとするはずさ。
おやおや、さっそく読み始めたあんたにはお邪魔だったな、それじゃあ俺は失礼するぜ。おっと、あんまりニヤニヤしながら読むなよ。お前さんのその気味悪い姿、どこからか覗かれているかもしれないぜ?
拝読後、すぐレビューを書こうと思いました。しかし親しいフォロワー様方が、この作品への嫌悪感を示されていて、書くのをためらいました😅(笑)
でもやっぱり、書きたくなったのでレビューを書きました。
正直この作品は、最初から最後に至るまで、共感あるいは心地良い気持ちになる方は少ないでしょう。それでも惹きつけられてしまうのは「してはいけない事をする」「覗き見」「好奇心」など誰しも心のうちに秘めているものをくすぐってしまうのです。
こうした欲求は、現実世界でしてしまっては犯罪です。満たすには小説の中が最適でしょう。
作者であるノランさんが、禁忌の世界をみせてくれます。「面白い」と手放しでは言えませんが、素晴らしい作品です✨
連日飽きもせずに報道される性犯罪にはもう、うんざりしています。
男性の、こういうことにかける労力と執念はすごいなって、常日頃から怖ろしくも滑稽に、そして嫌悪感と共に顔をそむけて女性陣はどん引きしているのでありますが、それでも君たちは次から次へと可愛い女の子がやって来るメリーゴーランドを見詰め続けるわけです。
メリーゴーランドといえば、柏木ハルコの『花園メリーゴーランド』です。
関係ないですか? そうですか。
可愛いメリーを、怪獣ゴーランドが追いかけまわす。
その一方で、か弱い女の子を他の男が傷つけるとなった時には立ち上がり、拳で阻止しようとするのも男性の本性です。
パーテルノステル(循環式エレベーター)と洒落のめしていても、つまりは変態の館。
覗き部屋に足繁く通う主人公をさらに覗いているような、そんな寒い気持ちで読んでいたのですが、よせばいいのに男気を出す主人公が気になってはらはらしながら読み切ってしまいました。
騙されませんよ。
こんなものではないでしょう。
カクヨムでは一応レイティングがありますが、主戦場を他所に移せば、文学性とエロスを両立させた、さらに高レベルの作品を書き切れる方だとお見受けします。
川端康成「眠れる美女」を読んだ時のような、ぞわぞわする読後感。
次回はぜひ、青髭を主人公に。