第6話 否定はしないよ?

川沿いの道を外れて歩きながら、住宅街へと入って行く。

二人並んで、小箱を抱えて、時々箱の中を覗き込みながら。

それぞれの箱の中では、眠いのかお腹が空いたのか、フニャフニャクンクンと鳴きながら訴えかけてくる、捨て犬と捨て猫。


「ん、お腹が空いたのね。もう少し、待っててね?」


子猫に話しかける彼女の横顔を眺めながら歩いていると、段差に躓いて転けそうになってしまった。


「……………………っとうわたっうっ?」


「……………………………………………」


「……………………………………………」


『クゥ〜ン…………………………………』


『フミャ……………………………………』


「東山君、さっきも転げ落ちてきたわよね?箱を落とさないのは流石だけど、オッチョコチョイなのかな!」


………………………………否定できない?


「普段はもっと、落ち着いているんだからな!」


「ふっ、どうだかね〜?あのね、こっちばかり見てると、また転ぶわよ。そんなに可愛い子猫が気になるなら、一度交換しましょうか?」


「………………………………気になる可愛いのは、にゃんこよりも法川さんなんだけどね?」


「っ!…………………………………………」


「………………………………………………」


「やっぱり、私の事、ナンパしてるんでしょ!」


「そんなつもりは、ないけど、あえて否定はしないよ?」


返事を期待した訳ではないけど、否、期待したんだけど、可愛いのは誰がなんと言おうと僕の主観では事実なので。


二人共黙ったまま歩き続けて辿り着いた動物病院の看板の前。


「法川さん、受付で野良犬野良猫でも見てもらえるか聞いてくるから、預かってもらえるかな?」


敷地内の駐車場脇のベンチにワンコの入った箱を置いて、頼んだ。


『クゥ〜ン…………………………………』


おいっ、そんな目をされたら、離れられなくなるじゃないかよっ!


「大丈夫よ〜、東山君はすぐに戻ってくるわよ〜?」


『フミャ……………………………………』


「あら〜、にゃんこちゃんも、大丈夫よ〜、私はここに居ますよ〜。」


なんとなく、ワンコとにゃんこに嫉妬しながら、扉に書かれた受付時間を確かめて、まだ時間内だよなと確認してから自動ドアのスイッチを押した。

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