第7話 自意識過剰

自動ドアが開くと、少し間を空けて、もう一つのドア。

こちらは自動ではなく、押して開ける開き戸になっていた。

まあ、患者ペットの脱走防止なのかな?


恐る恐る開けると、正面に居た、真っ黒な大型犬と目が合ってしまった。

この子、猟犬種だよな?

ブンブンと、目にも止まらぬ速さで尻尾を振り続けて鼻息荒く僕の関心を引こうとしているこの子は、僕の寸前で辛うじて飼い主のリードで押さえ込まれていた。


「あら〜、この子がこんなに尻尾を振って匂いを嗅ぐなんて!珍しいわね。」


今度は、その声の主と目が合ってしまった。


「………………………………………あっ!」

「………………………………………あっ!」


そこに居たのは、『天敵』だった。

同じクラスの、座席が僕の後ろの。

私服姿は初めて見たけど、いつもとは違う雰囲気でチョットだけ可愛いと思ってしまったのは内緒で。


「東山、なんでアンタがここに来るのよ!」


動揺を隠して無視して受付に向かうと、後ろから舌打ちが聞こえてきた。

彼女の飼い犬には好かれたようだが、彼女とは入学以来相性は最悪だからな。


西河亮子。

同級生。

まあ、端的に言って、巨乳ギャルだ。

僕が一番苦手なタイプだ。

うるさい女子は、巨乳は、ギャルは、苦手だ。

嫌いと言う訳ではなく、苦手だ。

今まで全力で避けてきた。

それが、1日中、真後ろから睨みを効かせてくる。プレッシャー以外の何物でもない。

プレッシャーは、別に悪い事ばかりではない。

返って授業に集中出来るお陰で、成績が爆上がりしてるから。


自意識過剰?

そんな事は、無いと断言出来る。

事あるごとに、後ろから椅子を蹴られてるんだから。


まあ、入学式後の教室での挨拶前に、自分の席に着く前に彼女の顔を、身体を、煩く喋ってるのを見て聞いて、


『………………………………うわ〜っ、ギャルだ〜、巨乳だ〜、しかも煩い〜』


僕の内心が、モロに顔に出ていたんだろう。

不機嫌そうな彼女の事は、取り敢えず無視させてもらった。

その場ですぐに詫びて、言い訳でもしていれば、少しは違ったのかもしれないなとは思うけどもう遅い。

直後は失敗したとは思ったけれど、今まで通りに避ければいいだろうと考えたのが甘かった。

彼女から、必要以上に絡んでくるんだから。

そのウザ絡みを無視すると、椅子を蹴られるという悪循環。


そういう日常を思い返しながら、溜息が出そうになるのを隠しながら、受付カウンターの白衣の女性に尋ねた。

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