第11話 なんでっ!どうしてっ?
気不味くなって無言で過ごしていたら、入口の自動ドアが空いて黒い塊が飛び出してきた。
「あっ、チョッ、まっ!」
リードを離してしまったのだろう。慌てた様子の西河が走り出てきたけど間に合いそうにない。
先程の猟犬が僕に向かって全力疾走してきたと思ったら、向きを変えて法川さんの方へ。
体を張ってでも止めようと踏み出そうとしたら、
「待てっ!伏せっ!ゴロンッ?」
法川さんの指示で、大きな真っ黒な猟犬が伏せたと思ったら転がって腹を出して、鼻息荒く法川さんを見つめ始めた。
「えっ、なっ、何で?」
「えっ、なっ、何で?」
唖然呆然とする、僕と西河。
「………………………………『すばる』?あなたねえっ!」
飼い主よりも、法川さんの指示を聞いているんじゃないかな?
まあ、放っといて診察受けないとね。
「そのまま!待てよっ?」
指示出しして、仰向けで息の荒い子を残して、
「さあ、行きましょうか!」
子猫の小箱を抱え直して歩き出した法川さんを、呆然と見送る僕と西河。
『クゥ〜ン…………………………………』
「……………………………………………」
「……………………………………………」
西河と、顔を見合わせて、しまった。
「行くよ〜?」
『クゥ〜ン…………………………………』
「……………………………………………」
「……………………………………………」
『スバル』君は、仰向けのまま、鼻息荒く法川さんを視線で追いかけてます。
「東山君?行くよ〜!」
「あっ、ああ、今行くっ!西河、じゃあな?」
「………………………………あっ、えっ?何なのよっ!」
去り際に振り返ると、こちらを視線だけで追う『スバル』君が、ウォーンと一声鳴いていた。
※※※※※※※※※※
………………………………もうっ、何なのよっ?
『スバル』が私以外の指示を聞いて待つなんて。
信じらんないっ!
「………………………………『スバル』、帰るわよっ!」
………………………………動かないっ?
………………………………なんでっ!
………………………………どうしてっ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます