第2話 帰れないから

雨上がりの金曜日夕方。


今日のバイトがお店の都合で無くなってしまった私は、仕方無く遠回りして家かなり離れた河川敷の公園で時間を潰していた。


高校入学してから一月余り。

『高校デビュー』に失敗した私は、未だ彼氏もできずにくすぶっていた。

何がいけなかったんだろうか?

容姿、自己評価中の上?自分では、黒髪清楚なJKだと思うんだけどな。

成績優秀、これは自己評価ではなく自慢できる。

性格、自分では良いと思うんだけど。


今家に帰ると、姉の彼氏が間違いなく居るだろうから帰れないんだよね。

今頃は、姉と二人でよろしくやっているんだろうな。

いつも、よろしくやっていた痕跡を残したままで帰っていく二人。

ホント、後始末くらいしていけよと思わなくもないけど。

この春から一人暮らしを始めた姉のアパートは壁が薄くて、『スルのに使いたくない』ので実家である我が家を使ってると公言してきたから、腹立たしいったらありゃしない!

ホント、毎日来るなよっ、ホテル行けよ!

羨ましくなんか、無いんだからね!

私なんか、彼氏いない歴、年齢に同じだしっ!


あ〜、なんとなく腹が立ってきたぞ。

これも、バイト先のせいだ。いくらお天気が悪くて客足が少ないからって、私のバイトシフトを切ることは無いと思うんだけど!

いつも重い商品の品出しは私ばかりにやらせるくせして、サボり魔の可愛い子ばかりひいきしやがって!

まあ、普段から理不尽な事があっても文句を言ったりしないから、私は切りやすいんだろうなとは思うけど。

あ〜、腹立つっ!

早く次のバイト探して決めよっ。


なんとなく八つ当たりで転がっていた空き缶を蹴り上げて草むらに放り込んでから、乾きかけのベンチに腰掛けてスマホを起動したところで微かな鳴き声に気が付いて周りを見渡した。


今、空き缶を蹴り入れたあたりだ。

何かにぶつけてしまったのかな?

何だろうか。

恐る恐る、草むらをかき分けて声がする方へ。

少し行くと、段ボール箱に入れられて微かに鳴き声を上げていた真っ黒な子猫が一匹。

ご丁寧に、『どなたかひろってあげてください』と拙い文字で書かれたメモが入れてあった。

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