白が彩る物語の厚み。白の少女と黒の少年の逃避行は、まだまだ続く。

王国の騎士団から追われているのはキルヤ魔術学校の優秀な生徒、セフィ。治癒とサポートを得意とする白魔術に長けた彼女がなぜ追われているのかというところから、物語は始まる。
説明は言葉少なに、余韻を持たせながら物語の奥行きが広がっていく。WEB小説は数あれど、この感覚に出会えるご縁はわりと少ない。のめり込むように読んでいくと、いつしか物語は多くの「白」で溢れている。
頭の中で「白って200色あんねん」の名言が通り過ぎた。思わず笑ってしまいそうになるが、実際は白で綴られる物語の鮮やかさに圧倒されていた。それはセフィの髪の色であり、憧れの色であり、時には畏怖でもある。言葉の美しさを堪能しながら、気づけば最終話を迎えてしまった。
惜しむらくは、騎士団から追われる犯罪者になってしまったセフィを連れて逃げる少年サウェルとの恋路がコンテストの文字数制限によって阻まれてしまったこと!純粋無垢な箱入り娘セフィと、年若いながらも自身や他人の罪と向き合うことができるサウェルのやり取りは、自分自身もはっとさせられることが多い。明確な利害関係もなく、かといって仲間でもなかったはずの二人の関係値が最終話で大きく変わり、その続きも欲しくなってしまった。何より、セフィの記憶を巡る旅をまだまだ見ていたい。

造り込まれた世界観を押し付けることなく、読者を巧みに誘ってくれる良質なファンタジー。息も吐けない疾走感の中の丁寧さにぜひ酔い痴れてください。おススメです!