だから英雄は旅をした

「君は、どうして生きてるんだい？　」

ここ、ノルン王国には一人の英雄が居た。
その英雄は、まさしく絵に描いたような少年だった。

全ての人間に優しく、困っている人は自分を犠牲にしてでも全て救う。
有事の際は、最前線に常に立ち続け、その圧倒的な武力を持って味方を鼓舞し、敵対する者に臆することなく剣を抜く。
奢ること無く努力を続け、全ての人間の手本になるよう心がけて生きている。

そんな英雄が。そういう風に育った英雄が。そういう風に創られた英雄が。

そして英雄も、それ以外の生き方を知らなかった。
それ以外の生き方があるとは知らなかった。
自分にも心を持って良いとは知らなかった。

ある日、彼の元に一人の人間が訪れた。
その人物は、彼を一瞥してこう言った。

「君は、どうして生きているんだい？…続きを読む