影踏みの町


ある地方の小さな町には、夜になると姿を現すという「影踏みの町」という都市伝説がある。町の住人たちは、夕暮れ時になると一斉に家に帰り、窓のシャッターを閉めるのが習慣となっていた。その理由は、夕暮れが「影踏み」の始まりを意味しているからだ。


伝説によれば、この町には不思議なルールが存在する。夜になると、町のあらゆる場所に見知らぬ影が現れるという。その影は、人間のものではなく、古びた衣装を着た異世界の者のように動き回る。住人たちは、この影に踏まれると、自分の影がそのまま異世界へと引きずり込まれると信じている。


数十年前、町に新たに引っ越してきた家族があった。引っ越してきた夜、家族は町の伝説を知らずにそのまま外に出てしまった。彼らは楽しそうに町を歩き回り、影踏みの伝説の存在を無視していた。夕暮れが迫る中、一人の少年が「影踏み」をしてしまった。


その瞬間、町の静寂が破られ、影たちが一斉に動き出した。家族は急いで家に戻ろうとしたが、既に遅かった。少年は自分の影が消えるのを見てしまい、そのまま家族と一緒に異世界へと引きずり込まれた。翌朝、町の人々はその家族のことを知る由もなく、ただ一つの証拠だけが残っていた。それは、家の前に残されたひとつの古びた靴だった。


それ以来、町の住人たちは影踏みの伝説を一層厳格に守るようになり、夜の町には誰も足を踏み入れようとはしなかった。そして、町の外からやってくる旅行者たちは、町の影に注意しながら過ごすことを学ぶのであった。影踏みの町には、今もなお、その伝説が静かに息づいている。

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