神社の怨念池


ある若者が、お盆に故郷の田舎に帰省した。彼は久しぶりに幼なじみと再会し、昔の思い出話に花を咲かせた。その中で、彼らは故郷の神社について話題にした。神社は古くからあるもので、村人たちは毎年お盆になると、先祖の霊を迎えるためにそこでお祭りを行っていた。しかし、若者たちはその神社にはある秘密が隠されているという噂を聞いたことがあった。それは、神社の裏手にある小さな池に関係しているというものだった。


池は普段は水が澄んでいて、鯉や亀などの生き物が泳いでいる。しかし、お盆の夜になると、池の水が真っ赤に染まり、奇妙な音が聞こえてくるという。それはまるで人間の叫び声や泣き声のようだった。村人たちはその現象を「池の怨霊」と呼び、池に近づかないようにしていた。池の怨霊の正体や由来は誰も知らなかったが、何か恐ろしいことがあったのだろうと推測していた。


若者たちはその話を聞いて興味を持ち、お盆の夜に池を見に行くことにした。彼らは神社の裏手に忍び込み、池のほとりに立った。すると、まさに噂通り、池の水が血のように赤くなり、悲鳴や泣き声が響き始めた。若者たちは恐怖に震えながらも、池の中を覗き込んだ。そこで彼らが見たものは、信じられない光景だった。


池の中では、無数の人間の手足や頭部が水面から飛び出し、互いに引き裂き合っていた。それらはまるで生きているかのように動き回り、苦しみや怒りを表していた。若者たちはその光景を見て気絶してしまった。


翌朝、若者たちは神社の宮司に発見されて目を覚ました。宮司は彼らに厳しく叱責し、池の秘密を明かした。宮司によると、池はかつて戦場だった場所であり、そこで多くの人々が殺されて埋められていたという。その死体は時間と共に腐って水源となり、池を形成した。そしてその水は死者の怨念や憎悪に満ちており、お盆の夜になると死体の一部が再び動き出すという。宮司はその現象を止める方法はなく、ただ祈り続けるしかないと言った。若者たちはその話を聞いて恐怖に震え、二度と故郷に帰ることはなかった。



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