灯籠祭りの失踪事件


ある田舎の村に、毎年夏になると盛大な祭りが行われていました。祭りの目玉は、村の中心にある大きな池に浮かべる灯籠です。村人たちは、灯籠に願い事を書いて、池に流していました。灯籠は、池の水面を照らし、美しい光景を作り出していました。


しかし、その祭りには恐ろしい秘密が隠されていたのです。実は、灯籠に願い事を書くときには、必ず自分の名前も書かなければならなかったのです。そして、その中から一つだけ選ばれた灯籠の持ち主は、祭りの夜に池に引きずり込まれて、二度と戻ってこなかったのです。


このことは、村人たちにも知られていましたが、誰も口に出すことはできませんでした。なぜなら、これは村の古くからの掟であり、池の神様への生贄だったからです。村人たちは、池の神様に恵みを求める代わりに、一人の命を捧げることで、平和と豊穣を保ってきたのです。


ある年の夏、村に都会から引っ越してきた少女がいました。彼女は、祭りの日に友達と一緒に灯籠を作って、池に流しました。彼女は、自分の名前と「この村で幸せになりたい」という願い事を書きました。彼女は、祭りの雰囲気に浸って楽しく過ごしましたが、夜が更けると友達とはぐれてしまいました。彼女は一人で池の方へ歩いて行きましたが、そこで恐ろしい光景を目撃しました。


池から手が伸びてきて、彼女が流した灯籠を掴んで引き寄せているのです。そして、その手は灯籠と一緒に彼女も掴んで池に引きずり込んでしまいました。彼女は必死に抵抗しましたが、力及ばず水中に沈んでいきました。彼女は最後まで「助けて」と叫び続けましたが、誰も助けてくれませんでした。


翌日、彼女の行方不明が発覚しましたが、村人たちは何も知らないふりをしました。彼女は都会から来た者だから、村の掟を知らなかったのだと言い訳しました。しかし、彼女の友達は納得できませんでした。彼女は真相を探ろうと池に近づきましたが、そこで見たものは衝撃的でした。


池の水面には、無数の灯籠が浮かんでいました。その中には、彼女が流した灯籠もありました。そして、その灯籠からは血が滴っていたのです。

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