自ら独房に入る人々

ある日、インターネット上に奇妙なサイトが現れた。

そのサイトの名前は「自由の牢獄」という。

そのサイトには、こんな文章が書かれていた。


あなたは自由ですか? あなたは幸せですか? あなたは本当の自分を見つけましたか?

もし、そうでないなら、私たちの牢獄に来てください。

私たちは、自らの意志で牢獄に閉じこもる者たちのコミュニティです。

私たちは、社会や家族や友人や恋人から逃げることで、自分自身を見つめ直すことができます。

牢獄の中で、自分の好きなことをすることで、自分の幸せを探すことができます。

牢獄の中で、他の閉じこもりと交流することで、自分の居場所を見つけることができます。

あなたも、私たちと一緒に住みませんか?


このサイトには、牢獄の写真や動画や地図や連絡先などが掲載されていた。

また、牢獄に住む者たちのプロフィールや日記や感想なども見ることができた。

その内容は、驚くほど平和で楽しそうで幸せそうだった。


このサイトを見た人々は、様々な反応を示した。

中には、このサイトを単なる嘘や冗談や宣伝だと思ってスルーした人もいれば、このサイトに興味を持って詳しく調べたり問い合わせたりした人もいた。

そして、その中の一部の人々は、このサイトに魅了されてしまった。

彼らは、自分の人生に不満や悩みや苦しみを抱えていた。

社会や家族や友人や恋人から理解されなかったり裏切られたり傷つけられたりした。

彼らは、本当の自分を見失っていた。

このサイトが示す「自由の牢獄」に憧れてしまった。


彼らは、勇気を振り絞って、「自由の牢獄」に連絡した。

すると、「自由の牢獄」から返事が来た。

「あなたは歓迎されます。あなたは家族です。あなたは幸せになれます。あなただけの牢房が用意されています。あなただけの時間が始まります。私たちは待っています」


彼らは、「自由の牢獄」から指定された場所と時間に行った。

そこで彼らを待っていたのは、「自由の牢獄」のメンバーだった。

彼らは、笑顔で彼らを迎えてくれた。

「ようこそ、あなたは自由です。あなたは幸せです。これからは、私たちと一緒に住みましょう」


彼らは、「自由の牢獄」のメンバーに連れられて、牢獄に入った。

そこで彼らに渡されたのは、鍵だった。

「これは、あなたの牢房の鍵です。いつでも出入りできます。いつでも自由です。いつでも幸せです。あなたは、いつでも本当の自分です。さあ、早く入ってください。私たちは見守っています」


彼らは、鍵を受け取って、牢房に入った。

そこで彼らが見たのは、自分の好きなものが揃っている部屋だった。

「これは、あなたの牢房です。あなたは、ここで好きなことをできます。ここで幸せになれます。ここで本当の自分になれます。さあ、楽しんでください」


彼らは、部屋に入って、鍵をかけた。

そして、二度と出てこなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る