#20 シルネを迎えに行く

 心の準備が出来たので、シルネを迎えに行く。


 シルネはレイラより高かった。


 優秀な魔法使いみたいだから仕方がない。


 契約を終え、彼女を外に連れ出す。


 そういえば、レイラの紹介をしていなかった。


「シルネ、こちらがレイラね。

 先に俺に仕えてくれている。

 先輩みたいなもんだ。

 年下だろうけど、仲良くしてほしい」


 契約の時に知ったがシルネは想像以上の年齢だった。


 流石エルフ、長寿の一族だ。


「レイラです。

 シルネさん、これからよろしくお願いしますね」


「シルネだ。

 よろしく頼む」


 挨拶はとりあえず何事もなく終えた。


「それじゃあ、シルネの必要な物を買いに行こう」







 まずは服屋に向かった。


 彼女は同じキャミソールとショートパンツを複数手に取り持ってきた。


「全部一緒じゃん。

 もっと違ったやつ選べばいいのに」


「あたしは動きやすいからこれでいい」


「これなんかどう?」


 かわいいワンピースを勧めてみる。


「フリフリした服は疲れるからいい」


 服には無頓着か。


「試着だけでも良いから」


「……わかった」


 シルネは渋々、試着してくれることになった。







 試着を終えたシルネが出てきた。


 腕を組んで仁王立ちするその姿は可愛いと言うより、カッコよかった。


「あたしにこういうのは似合わない……」


 ぶつぶつと文句を言っている。


「いや、十分似合ってるよ。

 綺麗だ。

 シルネは高身長でスタイルがいいから何でも似合いそう。

 これも着てみて」


「……わかった」


 褒められ慣れていないのか素直に従ってくれた。







 結局、試着してくれたものも買った。


 流石に同じ服しかないのはどうかと思ったからだ。


 着てくれそうにないが……。


「他に必要な物はある?」


「仕事道具が欲しい」


「魔法の研究用の?」


「ああ」


「でも研究道具は高いんじゃないの?」


「高いな」


 だよな。


「ないとダメか?」


「魔導具の作成は錬金台がいる。

 基本的に安い錬金台は基礎的なものしか作れない。

 複雑な物を作るには高価な錬金台が必要だ。

 錬金術に長けてる奴は安くてもどうにかするらしいがな。

 魔法研究は研究対象によって必要なものが変わる。

 主様はあたしに何をしてほしいんだ?」


 そういえば言ってなかったな。


「まずは俺に魔法を教えてほしい。

 魔法は初心者だからね。

 後は作って欲しいものが色々ある。

 たぶん複雑なものがあるから高い錬金台が必要かな?」


「何が作りたいんだ」


 俺は絶対欲しい物から有ったらいいな的な物まで一通り、軽く説明した。


「ははっ。

 あたしは主様の頭の中を調べたくなったぞ。

 因みに空間を繋げる魔法は私も研究中だ。

 他は良く分からなかったがおもしろそうだ。

 やはり錬金台は必要だろう」


「じゃあ、ダダリオ商会に錬金台を買いに行こう」







 ダダリオ商会で錬金台を見たが石造りの高価な机だなぐらいにしか思わなかった。


 文様とかが刻まれていて、何かの道具っぽいのはわかるがどう使うのか想像できなかった。


 シルネは迷うこと無く「これで」と言って決めてしまった。


 その錬金台はまあまあの値段がした。


 出費が激しくて貯金が心配になる。


 錬金台はシルネが空間収納に入れて持ち帰る事になった。


 あんな重そうな机を簡単に持ち運べるのはズルだな。


 店員も驚いていた。


「あ、それぞれのベッドも買っておかないと」


 何もしないただ寝るだけのシングルベッドだ。


 現状我が家には寝床が一つしかないし、たまには休む必要もある。


 住民が増える事だし必要だろう。


 ベッドもシルネが空間収納にしまってくれた。


「これで必要なものは以上か?」


「いや、まだある」


 俺とレイラはシルネに連れられてある店にやって来た。


「ここは?」


「タバコの店だ」


「いや、別に少しは買ってあげるけど、必要なの?」


「あたしの仕事道具だ」


 そういう感じね。


「でも身体に悪くない?」


「そんな話は聞いたことがないな」


 え?


「そうなの?」


 レイラがコクンと頷く。


 そうかそれなら別にかまわないか?


「わかった。

 俺も試してみたい」







 店を出てタバコを試してみる。


 シルネは早々に俺の手から箱を奪い取り、一本目を吸い始めた。


 高身長の金髪碧眼のエルフがタバコを吸ってる絵面はかっこよかった。


「レイラも吸ってみる?」


「はい、ご主人様」


 レイラと俺も咥えてみるが火を持っていないことに気づいた。


「シルネはどうやって火を付けた?」


「こうだ」

 

 そう言って、指先に火がともった。


 魔法か。


 便利だな。


 シルネは俺とレイラのタバコに火を付けてくれた。


「ふ――」


 俺は良さがいまいち分からなかった。


 レイラも首をかしげていた。


「俺は別に好きじゃないかな」


「私もよくわかりませんでした」


 確かに煙は嫌な感じはしなかったが美味しいとは思えなかった。


「お前たちにはまだ早かったって事だ」


 夕日も相まってタバコを吸っているシルネは寂しそうに見えた。


 彼女の空いている左手を右手で握る。


 もちろんもう片方はレイラと繋いでいる。


「?」


「寂しそうに見えたから」


「あたしは別に寂しくなってないぞ?」


「じゃあ、俺がただ繋ぎたかっただけ」


「……そうか」


「それじゃあ、買い物も済んだし家に帰ろうか。

 シルネの新しい帰る場所だよ」





 家に着くまでシルネは俺の手を離さなかった。


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