#24 シルネ先生
朝、レイラと愛し合っていたら昼になりかけていた。
一階に降りるとシルネがバスタオル姿でソファーに座りタバコを吸っていた。
「主様、おはよう。
主様は本当に元気だな。
お腹が空いたから、台所の果物を少し頂いたよ」
二階の廊下でおっぱじめてしまったし、流石にわかるか。
「大丈夫。
それぐらいのことなら一々、俺に確認しなくてもいいよ。
そういえば、シルネは朝早くに起きたみたいだけどなにしてたの?
風呂?」
「そうだ」
だいぶ、露天風呂が気に入ったみたいだな。
「自分でお湯入れたんだ。
朝から大変じゃなかった?」
朝からあれだけの大きさの風呂の湯を張るのは大変だろう。
だから俺とレイラはいつも朝はシャワーで済ます。
「魔石でやると大変だから、魔法でやったぞ」
魔法、なんて便利なんだ。
「お湯が張ってあるんだったら、今日は朝風呂で身体を洗おうか、レイラ」
「はい、ご主人様」
二人で風呂に入り終わると昼になっていた。
朝食兼昼食をレイラが準備し始めてくれる。
その間に俺とシルネで他の家事をすることになった。
「掃除か洗濯、どっちが得意とかある?」
「洗濯のほうが得意ではあるぞ」
「それじゃあ、シルネは洗濯をお願い。
洗濯物や道具は脱衣所にあるから。
あとで他の洗濯物も渡しに行くから、よろしく」
「わかった」
二階に行き、昨晩と今朝の愛の残骸を片付け始める。
シーツやら脱ぎ捨てられた衣服やらを集め、シルネの所に持っていく。
脱衣所を抜け、風呂場に出るとそこには大きな水球が浮かんでいた。
よく見ると中で衣類が回っている。
「すごいな、洗濯機みたいだ」
シルネの横に追加の洗濯物を置く。
「使える奴はよく使う魔法だ。
便利だからな」
「もしかして乾燥も魔法で出来たりする?」
「出来るぞ?」
「凄いじゃん!
じゃあ、これから毎日洗濯を頼んでいい?」
「わかった」
洗濯はこれからシルネに任せよう。
レイラの作った昼食を食べ、シルネに早速魔法を教えてもらう。
「生活で使う魔石が上手く扱えないんだ」
「見てみないとなんとも言えん」
それもそうだ。
光の魔石を持ってきて、実際に光らせてみる。
光り方が淡く、光がチラつく。
レイラがやると辺りを照らせるぐらいには明るくなるのに。
「水の魔石も試して見てくれ」
魔石に魔力を流すが、水は不規則にチョロチョロと流れ出るだけ。
「魔力量が極端に少ないか、魔力の扱いが下手なだけでは?
またはその両方……いや、もう1回これを試してくれ」
シルネの手にある光の魔石に魔力を込める。
だが、やはり光り方が淡い。
「なるほど、わかったぞ。
主様は魔力を勘違いしてる」
どういうこと?
「今、魔石を持つ人差し指に傷を付けておいたんだが、傷は見つけられるか?」
差し出された指を見るがそんな傷はない。
「そうだ、治ってる。
つまり、主様はあたしの手の傷を治癒したんだ」
ふむふむ。
「そしてその治癒は魔力を使っていないな?」
そうなのか?
そこらへんの感覚はわからない。
「つまり、主様は魔力と治癒の力を混同してるってことだ。
魔石に魔力を流す時に治癒の力も流れてるんだ。
混同してるからしっかり魔力が流せず、不安定な感じになる」
なるほど、俺はてっきり「治癒の力」は魔法だと思っていたし、魔法も同じ感じで発動すると思っていた。
「次は、それを意識してやってみな」
やってみるが、やはり光は淡くチラついて上手く出来ない。
魔力と「治癒の力」を別物だと意識しようとしても境が分からない。
「魔石を壊すイメージでやってみな。
出力を上げるってことじゃなく、治癒の力を削ぎ落とすようにだ」
壊すイメージ……出力を上げず……冷たい感じで……。
「さっきよりは良くなったな」
先程よりはチラつかず魔石が淡く光る。
「おお、良くなった」
「魔石で魔力がちゃんと扱えるようになったら魔法も教えてやる」
「はい、先生」
「ふふ、悪くないな」
この世界に来て、二人目の先生だ。
もちろん一人目は冒険者のレイラ先生だ。
「それは良しとして、その治癒の力をはどこまで把握してる?」
「把握?」
「どの程度まで治せるか、力の限界があるか、効かないのはどんな場合か、とかだ」
「確かに調べたいけど、あまり力を使いすぎて教会に目を付けられたくないから、極端な実験はしてないよ」
「主様はその力を隠しているんだったな。
でも、自分の力を正確に理解するのは大事だぞ」
正論だな。
「主様が仕事として請け負っている奴隷の治療のときに実験も同時にすれば良い。
あたしが監督して結果を分析するぞ」
「それはいいかもね。
実験の監督役が居てくれるのは助かるよ」
今度、奴隷の治療の仕事をくれるマルロスさんに話をつけておこう。
「主様は日常的にその力を使ってるのか?」
「いや?
誰かを治療するときぐらいかな」
「それじゃあ、昨夜は無意識か」
「昨夜?」
「あれだけ搾り取って、底が見えないのはそういうことじゃないか?
それに抱かれたとき、治療されたときと同じ感じが微かにしたぞ?
無意識に自分と相手に力を使っていないか?」
それはあり得るかも知れない。
確かに自分の持続力は前の世界に比べるとおかしい。
でも、それは神様がくれた身体だからだと思っていたが、治癒の力由来だったのか。
「レイラ、気づいてた?」
「いいえ、ご主人様。
ただ、ご主人様と出会ってから体調不良になっていないなと今思いました」
レイラには数日に1回、健康のために意図的に力を使うことがあったが、無意識でも使っていたのかもしれない。
「その力自体を無意識に使うことは悪いことではないと思うが、無意識で使っているということは力が制御出来ていないということだ。
魔法などは使用者の責任になるからな、変なことが起きないように制御は出来た方がいい」
シルネ先生の言うとおりだ。
「力の制御か、どうすればいい?」
「人の感覚の問題だから、慣れろとしか言いようがないな。
制御できないなら出来ないでそれを知っておくのも大事だから、焦らなくてもいい。
要するに自分の力を知るのが大事だって事だ」
なるほど。
「主様は力を意図的に使うことが少ないようだから、もっとその機会を増やすのが大事だな。
自分の身体を実験台にするのも良い」
「自分で力を試すには自分を傷つけないといけないから嫌なんだ。
痛いのは嫌いだ」
「痛いのが嫌なら痛くない所を使えば良い。
例えば髪の毛や爪。
治癒の力を使うとどうなる?」
言われてみて気づいた。
「伸びるのか?
伸びるならどこまで伸びる?
切ってからの時間経過は関係あるのか?
どれぐらい経つと効果が変わる?
髪質は良くなったりするのか?
考えたらキリがないぞ?」
確かに気になる。
流石シルネというべきか、頭の良さが伺える。
「先生! 実験メニューを考えて下さい!」
生徒が頭を下げ教えを請う。
「わかった。
ちょっと待て」
シルネ先生は紙と筆記具を取り出し、手早く書き記していく。
「最初はこんな感じだろ。
魔力の訓練も混ぜておいたから、それで魔力との区別も訓練できるだろう」
俺は早速そこに書かれた事に取り掛かる。
「レイラもシルネ先生に聞きたいことがあったら聞きなよ。
良いよねシルネ?」
「ああ、構わないぞ」
「では、お願いします。 シルネさん」
――――――――――――
「#22 シルネと初夜※」と「#23 一日ぶりのレイラ※」はエロすぎて修正しようがなかったのでカクヨム版では飛ばしました。
修正前のはノクターンノベルズにあります。
近況ノートから飛べます。
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