#21 シルネと初風呂

「なかなか立派な家に住んでるじゃないか」


 シルネは家に入るとそう呟いた。


 自分でもそう思う。


 ダダリオ商会と神様に感謝。


 新しいシルネの部屋を選ばせ、荷物をしまっていく。


「個々に部屋を与えるとは懐の深い主様だな」







 夕食を終え、一息ついているとシルネが聞いてきた。


「あたしは今日から主様の夜の相手をすればいいのか?」


 俺はそれで構わなかった。


 心の準備は出来ている。


 いや、正直に言おう。


 期待していた。


「レイラ、いい?」


「はい、ご主人様」


 今も横にべったりくっついているのになんでそんな冷静にOKを出すのかわからない。


 俺がズレてるのか?


「レイラ、お風呂は一緒に入ろうか?」


「いえ、大丈夫です、ご主人様」


 え、なんで?


 わからない。


「俺と入りたくなくなったの?

 シルネを買ったから?」


「いえ、それは違います!

 今日はシルネさんがお相手するんですよね?

 一緒に入ったら我慢できなくなってしまうので。

 ご主人様はシルネさんを抱きたいと思っていますよね?

 私はご主人様のしたい事を邪魔する女になりたくないのです」


 見透かされているか。


「私はご主人様に愛して頂けるだけで十分過ぎるくらい幸せです。

 これ以上求めたらバチが当たりそうです」


 そういう風に思っているのか。


「ありがとう、レイラ。

 じゃあ、シルネ今夜よろしく」









 シルネと初めて風呂に入ることになった。

 

 脱衣所に入ると彼女は何の躊躇いもなく、全裸になった。


 そして仁王立ちで俺が脱ぎ終わるのを待った。


 恥じらいが一切ない。


 立ち姿は彫刻の芸術品みたいに堂々としている。


 スタイルは抜群に良い。


 金髪のサラサラな髪。

 

 鋭い碧い眼。


 スラッとした長い手足。


 透き通る肌。


 女性たらしめる腰にかけてのくびれ。


 そして大きすぎることもなく小さすぎることもない形の良い双丘。


 俺は自分の服を脱ぐのを忘れ、芸術品を見るようにまじまじと見てしまった。


 俺は今日、この人を抱けるのか。


「どうした?

 何かおかしいか?」


「いや、見惚れてしまってた」


「あたしの身体に釘付けか?

 悪い気はしないね」


 シルネは悪そうな笑みを浮かべる。


「シルネ……脱がせてくれる?」


 レイラに頼む時は恥ずかしくないのに、シルネに頼むと恥ずかしい。


「主様は自分で自分の服を脱ぐことも出来ないのかい?

 困った主様だね」


 彼女が近づいてきて服を脱がしてくれる。


 元気な息子が放り出される。

 

 シルネはそれに気づくが気に留めなかった。


 俺だけ意識しているようで恥ずかしかった。


 思わず前を隠してしまった。


「よし、行こうか」


 





「随分立派な風呂じゃないか」


 シルネは露天風呂を見て感心していた。


 足先で温度を確認して恐る恐る湯に浸かっていく。


 入る所作が美しかった。


 スラッとした足が湯に飲み込まれていく。


 彼女は両腕を風呂の縁に置いて足を組んで湯に浸かる。


「あぁ――」


 そういって空に顔を向ける。


 どうやらこの風呂を気に入ってくれたようだ。


 俺も彼女のちょっと横に座る。


「あぁ――」


 同じように声が漏れる。


 一通り湯が身体に染み渡ると彼女の肌に触れたくなった。


「シルネ、触れても良い?」


 変な質問が口から出てしまった。


「主様の好きにすればいい」


 彼女は空を向いたまま空に向かって応えた。


 でもどうするのが正解か悩んだ。


 いつもはレイラが気づいたら横に張り付いている。


 彼女から触れてもらうか?


 それはおかしいか?


 考えを巡らしたが、結局自分からシルネの肩に自分の頭を預けた。


 いつもレイラに俺がされていることだ。


 そのまま彼女の手を自分の腕で抱きかかえた。


 男女が逆転したみたいになっている。


 シルネの手はスベスベで触っていて落ち着いた。


 これはこれでありだと思った。


 彼女は同じ体勢のまま風呂の心地よさに沈み込んでいた。


 後頭部を風呂の縁に置いて目を瞑り、湯の気持ちよさに声が漏れていた。


 そんな彼女の横顔さえも美しい。


 俺は彼女の腕を堪能した後、彼女の組まれた足を解いて、その間に入った。


 彼女に抱きつくように胸に頭をうずめる。


 いつもレイラがするみたいに。


 彼女の胸に耳を当てると彼女の鼓動が聞こえた。


 心地よく刻まれる拍動に安心感を覚える。

 

 背中に手が回ってきた。


 受け入れられているようで嬉しくなった。


「ねぇ、シルネぎゅっとして」


 両腕が背中に押される。


「もっと強く」


 彼女の身体に押しつぶされるように抱かれる。


 レイラが気に入るのもわかる。


 凄い安心感だ。


 俺も同じようにぎゅっと抱きしめ返す。


 甘えられるのも甘えるのも好きだ。


「交代しよっか」


 お互いの体勢を入れ替える。


「どう?

 安心しない?」


「……ああ、そうだな」


 彼女をぎゅっと抱きしめ頭を撫でる。


「頭を撫でられるなんて久しぶりだ」


 ポツリと呟く。


「気に入った?」


「……どうかな?」

 

 彼女の抱きしめる力が強くなった。


 シルネは俺の胸に顔をうずめ、深呼吸した。


「悪くない」


 彼女も気に入ってくれたようだ。


 鼓動が重なり合っていく。






「暑い」


 しばらくしてシルネはそう言って俺に預けていた身体を離してしまった。


 確かに今までの体勢は肩までお湯が来て暑かっただろう。


 彼女が離れてしまったので肌が寂しくなる。


「じゃあこっち来て」


 俺は風呂の中の階段部分に腰掛け、膝の上にシルネを呼んだ。


 俺の膝はお湯の水面と同じくらいの高さなので、膝上の彼女はほとんど湯に浸からない。


 これなら涼めるだろう。


「これなら良いでしょ?」


「涼しくて心地よいが……。

 ……。

 あたしのお腹に硬いの当たっているぞ?

 ここでするのか?」


「しょうがないでしょ、こんな綺麗な人を抱いてるんだから。

 気にしないで。

 するのはベッドに行ってからかな。

 俺はこうやってじゃれ合ってるのが好きなんだ」


「男なんてすぐやりたがると思ってたんだがな」


「俺は違うってことかな?

 こういうのは嫌い?」


「こういうゆったり肌を重ねるのはあまり経験してこなかったから新鮮だ」


 嫌ではないなら良い。


 沈黙が流れる。


 見上げるとシルネの瞳に自分が写る。


 碧い眼ってこんな綺麗なんだな。


 宝石みたいに輝いている。


 より近くで見るために顔を近づける。


 しかし目蓋が閉じられてしまった。


 ああ、キスされると思ったのか。


 じゃあお望み通りのキスをあげよう。


 1回だけ唇に軽く触れる。


 そして彼女の顔を見つめる。


 碧い眼がゆっくり姿を現し見つめ返してくる。


「あぁ……」


 幸せのため息が漏れてしまう。


 膝上のシルネを自分に押し付けるようにぎゅっと抱きしめる。


 彼女は応えるように同じような力で抱きしめ返してくれる。


 応えてくれて嬉しい。


 お湯で温まった彼女の高い体温を感じる。


 スベスベの肌が自分の肌に重なって気持ちいい。


 目の前の鎖骨が綺麗で思わずキスしてしまう。


 そこから首、肩、胸と順にキスで染め上げていく。


 彼女が自分の綺麗な身体を好きにさせてくれていると思うと愛おしくなって仕方ない。


 彼女の口に戻ろうと彼女の顔をみると目がトロンと優しくなっていた。


 俺が唇を近づけると彼女の唇が迎えてくれる。


 唇同士でつぐみ合う。


 シルネからも求めてくれる。


 嬉しかった。


 我慢できず舌を出すと、彼女の舌が迎えてくれる。


 だんだん激しくなっていくに連れて、吸い付く音が風呂場に響き始め、息づかいが荒くなっていく。


 シルネの顔からは劣情が滲み出していた。


「身体洗うのは良いからもうベッド行こ?」


 シルネはキスで返事をしてくれた。


――――――――――――

2024/04/15 性的表現を一部削りました。

修正前のはノクターンノベルズにあります。

近況ノートから飛べます。

https://kakuyomu.jp/users/sigma-N/news/16818093074852774009

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