#25 二人の距離感

 シルネに渡された紙に書かれた項目を一つずつこなしていく。


 治癒の力の制御と魔力の訓練も兼ねているので疲れる。


 それにしてもあの短時間でよくこれだけの事を思いつく。


 シルネ先生様々だ。


 休憩でソファーに腰掛ける。


 かわいい美人とかっこいい美人が真剣な顔で話している。


 素晴らしい景色だ。


 会話が所々聞こえるが、内容は俺にはわからない。







 2人を眺めていたら、寝てしまったらしい。


 頭に暖かさを感じる。


 これは誰かの膝上か。


 匂いを嗅ぐ。


 どうやらレイラが膝枕してくれているみたいだ。


 優しい手付きで頭が撫でられる。


 とても穏やかな気分になる。


「レイラはあたしが主様に抱かれてよかったのか?」


 なんというストレートな質問が聞こえた。


「ご主人様を独り占め出来なくなったのは残念だと思いますが、ご主人様の邪魔になるような事はしたくありません。

 ご主人様に嫌われるのだけは耐えられません」


 レイラはそういう考え方か。


「答えになっていないぞ?」


「別に気にしていませんよ。

 私はご主人様に愛されるだけで十分過ぎる程幸せです。

 むしろこの抱えきれない幸せを誰かと共有したいぐらいです」


「羨ましいな」


「ご主人様ならシルネさんもちゃんと愛して下さると思いますよ」


「いや、そういう意味じゃないんだ。

 そこまで人を真っ直ぐ愛せるのが羨ましいって意味だ」


「愛せないんですか?」


「長く生きてたら色々あるもんだぞ」


 ふぅーと息の吐く音がした。


 シルネはタバコを吸っているな。


「そうなんですね。

 でもご主人様ならそんなシルネさんでも受け入れてくれると思いますよ」


「それは何となくわかる気がするよ。

 でもこれは私自身の問題だからな」


 会話が途切れた。


 俺はわざとらしく伸びをする。


「んーあれ、寝ちゃってたか」


 目を開くと大きな胸の向こうにレイラの顔が見える。


 こうやって見おろされるのも良い。


「おはよう、レイラ」


「おはようございます、ご主人様」


 起き上がってレイラに軽くキスをして抱きしめる。


 そうすると彼女が優しく抱きしめ返し、キスしてくれる。


 こういう小さい幸せがたまらない。


「シルネもおいで」


 立ち上がり、両手を広げて彼女を求める。


 シルネが抱きしめてくれる。


 彼女はレイラより体格が大きいから包み込まれる感じが強くて安心する。


「主様にお願いがあるんだが」


「なに?」


 シルネの腕が解かれてしまった。


 残念。


「研究やら開発でお金が掛かるから自分で動かせる資金が欲しい。

 自分の仕事をしてもいいか?」


「こっちから頼んだ事についてはお金は出すよ?」


「あたしは頼まれてないこともやりたいんだ。

 それにも金がかかるからな」


 お小遣いをが欲しいということか。


「うーん、別に構わないけど、どんな事をするつもり?」


「作った物を売ったり、魔法使いとして雇われたりだ」


「危ないことをしないなら、いいよ」


「本当か!」


 彼女の顔がパーッと明るくなる。


 シルネがこんなに嬉しそうなのは初めて見るな。


「それで稼いだお金は全部自分で持っていっていいよ」


「?! いいのか?」


 本当はこちらに幾らか入れてほしいがここが甲斐性の見せ時だと判断した。


 そんな嬉しそうな顔をしていたら、少しくれとは言えない。


「レイラもお小遣い欲しい?」


「いいんですか? ご主人様」


「いいよ?

 買いたい物あったりする?」


「……あります」


「じゃあ、あげる。

 多くはないかも知れないけどね」


「では、ご主人様、私も自分のお金は自分で稼ぎます」


「どうやって?」


「冒険者として依頼を受けます」


「危ないことはダメだよ。

 それにレイラは俺がいないと依頼を受けられないんじゃなかったっけ」


 奴隷は主人の受けた依頼をすることは出来るが、自分で依頼を受けることは出来なかったはずだ。


「それは……そうですね」


 レイラがしょんぼりしてしまった。


 かわいい。


「じゃあ、いつも訓練がてら受けてる討伐依頼の魔物のうち、レイラが自分で狩った魔物を自分の報酬にするのはどう?」


 これなら一応、レイラの手柄になるだろう。


「いいんですか?」


「いいよ。

 お小遣いはあったほうが良いと思う。

 俺にお願いする方法だと、レイラは遠慮しそうだから」


 間違いなく遠慮するはずだ。


「わかりました、ありがとうございます、ご主人様」








 昨晩はシルネと寝たので今晩はレイラと寝ることにした。


 レイラとは朝、我慢できずに愛し合っているが、夜は夜だ。


 愛し合った後に2人で抱き合って眠りたい。


 風呂は3人で入ろうかと思ったが、まだ早い気がしたので今日はレイラと風呂に入っている。


 レイラは俺の脚の間に入って、横向きに俺の胸にもたれ掛かっている。


 もはや彼女の定位置だ。


 俺の鼓動を聞くように耳を心臓に当て、指で俺の首、腕、胸を優しくさすってくれる。


 それがとても心地よい。


 俺は片手で彼女が滑り落ちないよう肩を抱きながら、片手で彼女の豊満な胸に触れる。


 柔らかくて気持ちがいい。


「シルネと喋ってたけど仲良くなれそう?」


 ――チュッ。


 会話の合間にキスをする。


「はい、ご主人様。

 良い人そうで良かったです」


「何話してたの?」


 ――チュッ。


「幾つかの相談に乗ってもらいました。

 あと、昨晩のご主人様との夜について教えてもらいました」


 いや、別にいいけど、恥ずかしい。


「シルネさんが羨ましかったです。

 ご主人様をグチャグチャにできるなんて。

 私はいつも気持ちよさに負けてグチャグチャにされてしまうんですと言ったら助言を貰えました。

 今晩試してもいいですか?」


 シルネはレイラに一体なにを吹き込んだんだ。


 ――チュパッ。


「もちろんお願い。

 凄く楽しみ。

 早く身体を洗ってベッド行こ」


 俺はレイラと一緒にベッドに向かった。


――――――――――――

カクヨム版は所々削ってます。

修正前のはノクターンノベルズにあります。

近況ノートから飛べます。

https://kakuyomu.jp/users/sigma-N/news/16818093074852774009

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異世界奴隷ハーレム 志熊えぬ @sigma-N

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