#11 装備を買いに行く

 唇に柔らかい感触を感じる。


 レイラのキスで目が覚めた。


 こちらもキスでお返しをする。


 彼女は俺が起きたことに気づき、止めてしまう。


「ああ、これは、その……」


「もっとして」


 続きをお願いする。


「はい、ご主人様」


 再び、レイラのぷるっとした唇の感触が戻る。


 控えめで優しい。


 心が満たされる。


 レイラを抱き寄せる。


 彼女が抱きしめ返してくれる。


 しばらく彼女の愛を受けて、俺は完全に目が覚めた。


「おはよう、レイラ」


「おはようございます、ご主人様」


 起き上がろうとしたが、レイラに引っ張られた。


「わたしにも……して下さい」


 うるっとした瞳でお願いしてくる。


 拒めるはずが無かった。






 着替えを終え、朝食を取りに行く。


「お金も稼げたし、今日はレイラの護衛装備を買いに行こうと思うんだ」


「わかりました、ご主人様」


「俺はそこらへんの知識がないから、レイラに任せるよ。

 命に関わるものだから、遠慮せずに選んでね。

 それで、どこに買いに行けば良いかな?」


 朝食を取りながら、レイラに聞く。


 テーブルの下で彼女の足を自分の足で甘えるように挟む。


「カルロ様たちのダダリオ商会に行くのはどうでしょう?

 知り合いの商人なら信用出来ると思います。

 それに彼らはご主人様に恩を感じてるはずです」


 彼女は足をはさみ返してくれる。


「確かにそれはいい考えかも」


 ダダリオ商会に行こう。


「話は変わるけど、レイラのご両親の事教えてくれないかな?

 もしかしたら生きてるかも知れないし、情報を集めようかなと思って。

 レイラの為になると思ったんだけど、どうかな?」


「……お願いします」


「無理してるならやめておくよ?」


「いえ、大丈夫です、ご主人様。

 わたしも前を向かないといけませんから」






 ダダリオ商会はデカかった。


 1ブロックすべてがダダリオ商会が所有してるっぽい。


 ひょっとしたらそれ以上あるかも知れない。


 約束を取り付けてないのでカルロさんとアルベルトさんに会えるか分からないがとりあえず入ってみる。


 従業員に話しかけ、2人に会いたい旨を伝える。


「ここは売り場なので、事務所の方を訪ねて下さい」


 どうやらここには居ないらしい。


 デカすぎてわからん。


 隣の建物に移動する。


 受付の人に名前と用件を伝える。


「約束はありますか?」


 いや、約束はしていない。


「でしたら、今日中に会うのは無理かと思います。

 明日なら可能かもしれません。

 また、明日お越しください」


 これは門前払いというやつではないだろうか?


 確かに2人はこの商会のトップだ。


 簡単に会うことは出来ないのもわかる。


 マルロスさん経由で頼むしかないかもしれない。


 俺は2人に会うのは諦めたが、折角来たので売り場に戻り、ブラブラすることにした。


 中は百貨店風のお高い雰囲気をしていた。


 武器や防具がある雰囲気ではない。


 高級そうなドレスがいくつも展示されていた。


 レイラが着ているのを見てみたい。


 俺はレイラを連れて、ドレス売り場に入っていった。






 レイラはどんなドレスも似合っていた。


 可愛い系、大人なシック系、正統派系、何でもだ。


 高価だろうけど一つは欲しい。


 悩んでいると声をかけられた。


 先程、受付で対応してくれたお姉さんだ。


「会長がお会いになるそうです」


 まだ、ドレス決めてないのに。


 俺達は渋々、お姉さんに連れられてドレス売り場を後にした。







 俺たちは豪華な部屋に通された。


 そこで待っていると、昨日会ったアルベルトさんがやって来た。


「これはヨシユキ様、当商会にいらしてくださりありがとうございます。

 本日はどのようなご要件でしょうか?」


 とても丁寧に対応してくれる。


「今日は彼女の武器や防具などの装備を探しに来ました。

 あと、借家も扱っていたら見てみたいです」


「なるほど、承知いたしました。

 では、商会随一のものをご準備しましょう」


 そう言って、従業員に指示を出していた。


「準備しますので少々お待ち下さい」


 そう言って、3人で部屋で座って待つことになった。


 レイラは俺の隣にべったりくっついて座っている。


 俺はレイラの腰に手を回して座る。


「お二人は仲がとてもよろしいのですね」


「すいません、お目汚しでしたか?」


「いえいえ、美男美女がとても絵になっています」


 レイラは少なくともそうだが、俺が美男は言いすぎじゃないか?


「ところでカルロさんはどうされてます?」


 話題を変える。


「父は回復したことを伝えに各所に挨拶に行きました。

 どうやら商会の仕事にも復帰する予定です。

 会長の立場を取り返してくるでしょう。

 従業員のためにも私は譲る気はないんですがね。

 あはははは」


 そう言って笑っていた。


「それは余計な事をしてしまいましたね」


「いえいえ、本当に感謝しています。

 正直、商才の方は父の方が上ですから、直ぐに会長に復帰すると思います。

 優秀ゆえに周りによく迷惑をかけたんですが……。

 私は元の副会長に戻って父の折衝係に戻るだけです」


 カルロさんは周りを巻き込んでいくタイプのリーダーなんだろう。


 確かに昨日の元気は凄かった。


「準備が出来たようです。

 建物を移動しましょう」







 案内された建物は他の商会の建物と違って無骨な感じだった。


 中を見渡すだけで沢山の武器や防具などの装備が並べられていた。


「お好きに御覧ください」


 俺はレイラの手を引き、武器の並んでいる方に向かう。


「自分に合うのを選んでいいよ。

 遠慮しないで」

 

 レイラの目がキラキラしている。


 正直俺はよくわからないから、レイラが決めるまでぶらつこうとしたが、手が離れず引き戻された。


「ご主人様、側に居て下さい」


 もちろん居るとも。


 武器のスペシャリストっぽい従業員が出てきて、レイラが相談している。


 二人の会話の半分以上はどういう意味か理解不能だ。


「ご主人様、決めました」


 俺がぼんやりレイラの頭を撫でているとレイラがそう言ってきた。


 レイラはホクホク顔で剣を抱えていた。


 見た感じかっこいい。


「いいね。じゃあ、次は防具か」


 防具は正直、厳ついのは止めてほしい。


 そりゃ、かっこいいかも知れないが、可愛いレイラが見たい。


 レイラに引っ張られついていく。


 売り場の人と相談しながら色々試着している。


 ああ――、それはちょっと普段遣いには向いてなさそうとか、それは、あんまり顔が見えないとか思いながらレイラの様子を見ていた。

 

 結局、レイラが選んだのは防具とは思えない程の可愛い服だった。


 胸元がざっくり開いていて、ズボンではなく丈の短いスカートだった。


「え?

 そんなのでいいの?」


「ご主人様は、如何にも防具みたいな装備は嫌そうだったのでこれにしました。

 大丈夫です、特殊な加工がしてあるそうなので、下手な防具より性能はいいそうです」


 レイラの試着を見てた時に顔に出てたのかな。


 でも、その装備なら日常的に着てても問題なさそうだし、なによりかわいい。


「これで終わり?」


「いえ、後は細々したものとご主人様のものです。

 ご主人様も必要最低限の武器と防具は必要だと思います。

 訓練してほしいと言ってましたよね?」

 

 確かに言ったな。


「わかった、一緒に決めようかレイラ」


「はい、ご主人様」


 そして、俺の普段遣い出来るそれなりの防具と最低限の剣を選んで会計した。


「大金貨6枚!?

 クソ高いやん!」


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