異世界から転生…いきなりハードライフ
桜雪
第一楽章
第1話 昨夜♡の娘は抱き枕
アッチの世界では『吟遊詩人』だった。
世界中を旅して、行く街、行く街で受け身の恋愛を詩にした。
私が唄えば女性は恋に堕ちる。
神に与えられたフルスペックは人類の半分を幸せにするために…。
そう全女性を幸せにするために私は産まれた。
神の与えた試練、私に永住は許されない。
世界中を旅して、世界に幸せを広げなければならない。
「あぁ神よ…アナタはなぜに、このような試練を私に与えたもうたのか…」
銀色の髪が風に遊ぶだけで、目の前の娘は恋に堕ちる。
月明かりに照らされた白い肌に触れたいと、娘はその手を伸ばす。
「この世界には、私に抱かれる以上の幸福はないのかもしれない」
静かに目を閉じ、月明かりを纏い今夜は眠ろう…横で眠る娘の吐息を子守歌にして…。
…………
「あぁ神よ…」
「じゃねぇ‼」
私の尻を蹴る私の妹、その名は『コトネ』
「痛いぞ…我が妹よ」
「鏡の前で
JC1年、手足は細く長いが胸は発展途上であるらしい。
「オメェ、今日から高校生だろ? いいかげん自覚しろよキモブタが‼」
「キモブタ?」
「オメェ…鏡をよく見てみろ…キモ怪人『ブヒー』が映ってんだろうが…」
キモ怪人『ブヒー』とは…どうやら私のことらしい。
私が鏡を覗くと…銀色の長い髪、切れ長の涼しげな緑の瞳、赤い唇、白い歯、きめ細やかな白い肌…エトセトラ…エトセトラ…
「非の打ちどころのない美貌ではないか?」
「ヤバめのクスリを大量に処方されたんか?」
我が妹『コトネ』は口が悪い。
容姿は悪くないが、そのぶん口が悪い。
「うむ…ん? あぁ…嫉妬かぁ‼」
グムッ‼
我が妹『コトネ』の右ストレートが顔面に突き刺さった。
「うげっ…ネチャッとした…キモい…触っちゃった…お母さ~ん‼ 消毒液ー‼」
我が妹『コトネ』は走って洗面台から去っていった。
かつて私の前から走り去った女性がいただろうか?
いや、いない‼
そもそも私に妹?
「おやっ?」
私は…なぜ、ここに?
アレッ?
記憶というか知識なのか…見慣れぬはずの、この庶民的な建物のことも目の前にある歯ブラシのことも私は知っている。
使ったことはないはずなのだが?
そもそも昨夜、隣で寝ていた娘はどこに?
私は階段をドスドスと駆け上がり私の部屋のドアを開けた。
「臭い…オークの巣かココは?ってくらいに臭い‼」
染みだらけのベッドに横たわる娘…の抱き枕?
「おぉぉ…おぉぉぉー‼ 勝手知ったるココはどこなんだー‼」
「朝から煩いわよヒロシ‼ さっさとご飯食べて学校いきなさい‼」
私が歩くと軋む階段を降りキッチンへ向かうと知らないはずの、良く知る両親と我が妹『コトネ』がいた。
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