第2話 ブサイクというだけで…罪?
とりあえず椅子に腰かけて、トーストにピーナツバターとイチゴジャムをベターッと塗る。
「うわぁ~、なにそれ? 肥満Food? それだけで2日ぶんくらいのカロリーあるわ~…見るだけでキモい‼」
我が妹『コトネ』が露骨に嫌そうな顔をする。
「コトネ、お兄ちゃんの毎朝のルーティンじゃない、嫌な顔しないのよ」
「母が甘やかすから、我が家にモンスターが産まれたのよ~」
「あらっ、産まれた時はモンスターじゃなかったわよ、なぜかモンスターに育っただけよ」
私がトーストを2枚食べている間に何回『モンスター』という単語が母娘間で飛び交っただろう。
「行ってきます…」
ボソッと呟くように我が父がキッチンを出ていく。
私の後ろを通る時にポンポンと肩を2回叩いて出ていったわけだが、アレは『ドンマイ』ってことだろうか?
初めて言われたというか…他人から憐みの視線を受けたのは初めてだ。
「キモ兄‼ ブタ兄‼ アタシも学校行くから、10分遅れてから家を出なさいよね」
なぜ2回も侮辱人称が入ったのか? なぜ10分遅くなのか?
色々と聞き返したかった私は
「なぜ?」
と一言で聞き返してみた。
私くらいの神に選ばれし者の会話はスマートであるべきなのだ。
「決まってるでしょ‼ 兄妹なんて思われたくないから‼」
スクッと立ち上がり我が妹『コトネ』は登校していったのである。
私は、我が妹『コトネ』の言う通り10分遅れで登校することにした。
ソコソコの距離がある高校なのに私はバスも電車も自転車ですら使わない。
我が妹『コトネ』に言われているかららしい。
「いい、電車は他人様の迷惑になる‼ バスも‼」
「場所を取るから?」
「違うわよ‼ 性犯罪者の顔しているからよ‼ 身内から性犯罪者とか? あっちゃあならないことなのよ‼」
「兄は、性犯罪などしないよ」
「しそうな顔してるんでございますわよ‼ 自覚してくださいませんか‼ イケメンの性犯罪者と無実のアンタが並んでいたら、間違いなく現行犯逮捕されるのアンタだからでございますのよ‼」
思い出しながら徒歩で登校していたら、なんだろう旅慣れていたはずなのに足取りが重い、というか…なんか重い。色んな意味で。
ちなみに私は自転車には乗れないらしい。
高校に着くころにはワイシャツがビタッと体に張り付くほどに汗をかいていた。
何かがオカシイ…
「まさか…都伝説だと思っていたが…いやいやそんなはずはない」
教室の隅でブツブツ呟く僕に話しかけてきた同級生がいた。
「よぉ、ブッキィ、同じクラスだったな」
「ブッキィ…」
そう、それは僕の事だ。
僕は同級生から『ブッキィ』と呼ばれている。
『ブサイク』あるいは『ブタ』と『キモい』の造語である。
「あぁ…おはよう…タカシ」
彼は『タカシ』我が同級生であり、小学校の頃から続く『ブッキィ』の名付け親である…という記憶がある。
さぁ…気を取り直してハイスクール編の始まりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます