第三楽章

第11話 生徒指導室 再び

 校内でも私のコンランドリー自家発電事件は尾ひれが付いて光の速度で広まっていた。

 違うクラスどころか学年すら違う男子・女子が廊下から私を見に来る指を指す。

 もう後ろ指とかのレベルじゃない。

 前からも遠慮なく指を指されている。

 笑えないのだ…性犯罪は。

 違うんだ‼

 私は、そう叫びたい気持ちを押し殺した。

 きっと何を言っても無駄だから…。

 私は学び舎のトイレの個室で、1日を過ごした。

 気付けば放課後。

 カチャッ…

 私はソッとトイレの個室から出た。

 外に誰も誰もいないことを確認しトイレから出た。

 ソロリ…ソロリ…と教室へ近づき、ソッと中を伺う。

 放課後…誰もいない。

 ホッと胸を撫で下ろし教室へ入り、鞄をとり、後ろのロッカーに入れた私物をまとめる。

 ガラッ…

 突然、教室に入ってきた女子数名。

 部活が終ったらしい。

「……」

 目が合い、お互いに無言の数秒。

「いやぁーーー‼」

 突然、女子が悲鳴をあげる。

「えーーーー?」

 私も思わず声をあげる。

「変態が…体操着を漁ってるーーーー‼」

「えーーーー?」

 校舎に響く女子の声、残っている生徒がワラワラと集まって来る。

「どうした?」

 体育顧問が教室へ入ってきた。

 まずは涙目の女子を女教師に預けツカツカと私に近づいてきた。

「オマエ、何をしたか解ってるんだろうな‼ 昨日の今日で…」

 怒っているんだか、呆れているのやら。

 私は再び、生徒指導室へ連行されたのである。

 しばらくすると、我が担任が入ってきた。

「……朝ぶりだな…」

 我が担任は深いため息を吐くと、椅子に深々と腰を降ろした。

「で?」

「なにがですか?」

「で、今度は何をしてくれたんだ?」

「帰宅しようとしただけですが」

「女子の体操服を盗んでか?」

「誤解です」

「皆、そう言うんだよ、捕まるとな…どうでもいい言い訳するんだよ、盗ってない嗅いでいただけだ…とかな、それだけで充分なんだということを忘れてしまうんだよ」

「誤解です、嗅いでもいません」

「じゃあ、なんだ? 迷子の体操服を保護しようとしただけか?」

「……迷子の体操服?」

「もうなんでもいんだよ‼ 警察呼ばれてるしなオマエ‼」

 ガラッ…

 生徒指導室に警官が入ってきた。

 何やら我が担任とゴニョゴニョ話している。

 警官が敬礼して私の鞄を、我が担任に渡して帰っていった。

「……未遂か…お互いラッキーだったな」

「未遂?」

「まだ盗って無かったんだな…オマエ、数分ズレていたら…解っているな?」

「誤解です」

「うん…今回はソレで済んだんだ…良しとしよう、だが次は無いぞ‼ 帰って良し」


 私はトボトボと下駄箱へ向かった。

 カチャッと扉を開けると私の革靴に溢れるほどの画鋲が…。


「この世界はなぜに私に、こんなにも辛くあたるのか?」

 そして、この画鋲をどうしたらいいものか、私は考えていた。

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