ミンのもとで君は耀く

 前作は『ただいま』、今作には『ようこそ』がついている連作になる。
 居場所探しという言葉は昔から盛んに耳にしていた気がするが、その悩みをわたしは持ったことがない。
 どこかに自分の居場所があるはずだという、浮遊しているような感覚なのだろうか。
 どこかに本当の自分が落ちていて、その場所こそが自分らしく生きられる理想郷だという願いなのだろうか。
 居場所探しとは、孤独と一体となった時に用いられる言葉のように想う。
「ここはわたしのいるところではない」
 そんな疎外感を抱いた時に。

 大田氏の代表作というと「一蓮托生」シリーズなのだろうが、ふしぎとこの小さな短篇が好きだ。
 何故かというと、70年代の少女漫画、それも24年組といわれる大御所の、当時のまんが絵で読みたい気がするからだ。
 大部分が黒塗りにされた原稿に、その星ではミンと呼ばれている月がやわらかな光を投げかけており、竹宮惠子や萩尾望都の描く少年が砂嵐の中に立っている。
 少女まんが家が描いた当時のSFは縦横無尽な発想の上にもきちんと少女漫画のエッセンスが乗っており、一度読むと忘れ難いものがある。
 そして、それらの漫画の主人公は孤独な少年が多かった。そのせいかも知れない。

 前作では居場所がないと飛び出した少年が、今作では居場所がないと飛び出してきた少女を迎え入れる。
 胸に抱いていた冷たく寂しい石はやがてミンのように耀いて、砂漠に迷う者を迎え入れる。
 ようこそ。よく辿り着いたねと。

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