ゴルダの忙しい日々② 頑張れゴルダ

---カオが弁当屋を始めて少しした頃(女神倉庫が発見された後の話、ゴルダ視点---



カオの店に弁当を買いに行ったギルド員が走って戻ってきた。

「ギルマス、大変です!」


「落ち着け」


「弁当屋の店員が皮アーマーを着ています!」


そんなに慌てて報告をする事ではあるまい、恐らくこれから街の外にでも狩りに行くんだろう。


「弁当屋のガキらですよ!?まだ冒険者の登録も出来ないようなガキが結構立派な皮鎧を着込んでいるんです、しかもひとりふたりじゃない、ガキらが皆!それと店前に立ってたバズッドも」


どう言う事だ?

バズッドはともかく子供ら全員が装備を着けている?

………まさか、この街から、出るつもりなのか?


「ちょっと出てくる」


俺はひと言放ち、カオの弁当屋へと向かった。

大通り側から弁当屋の店内へと入ると元気の良い声に出迎えられた。


「「いらっしゃいませー」」


店内にはこの店で働いている子供がふたりいた。

確かに真新しい皮のアーマーを着込んでいる。

それと同じ皮を使った帽子、サンダルも履いている。

店の入り口に立っていたバズッドも揃いの皮装備だった。


「…おう、邪魔する。良い装備だな。どうした?」


「「店長からもらったー」」


態々子供らに合わせて作ったかのように身体にピッタリのアーマーを着ている。

カオが作らせたのか?何かの訓練ために?


「弁当屋を閉めて狩りにでも行くのか?」


「違うよー。カッコいいから俺毎日着るんだ」

「俺も!これ着ると何かいつもより速く動けるよね」


俺がジロジロと見たせいか少し居心地悪げに俯いた。


「あ、の…、ゴルダさんも欲しいなら、店長に言ってみれば貰えるかも……」


どういう事だ?貰えるとは…、余るほど持っているのか?

疑問に思いながらカオを訪ねてリビングへと入っていった。


話を聞いて驚いた。

使わない武器、装備が山ほどある、と。

コイツ、知り合いにホイホイとバラ撒いていたら、直ぐにヤバい奴に目をつけられるぞ。

いくら、冒険者の警備を店に置いてもカオを四六時中、見張るわけにはいかない。

目を離した隙に誘拐もあり得る。


俺はギルドで買い取る提案をカオにした。

驚いたのはサイズが自動調整されるという稀人仕様のアーマーだそうだ。

仮に王都で販売をしたら、かなりの値がつくだろう。

が、カオは通常のアーマーよりさらに安い売値を提示してきた。

俺が、低ランクの冒険者に無料で貸し出すと話したからだろう。

相変わらず、底抜けのお人好しで、こちらが怖くなるくらいだ。

ふぅ、とりあえずこの件はもちろん王都へも連絡をしなければ。



それから暫くはカオから買い取ったアーマーの取り扱いでギルドは忙殺された。

低ランク冒険者へ貸し出すをするのだが、紛失盗難を防ぐ対応で大忙しだった。

王都からも付与魔法士を招き、契約本人以外が使用出来ない付与魔法をかけてもらった。



ようやく落ち着いた頃、弁当屋からダンが俺を呼びにきた。

嫌な予感しかしない。

だが、行くしかない。


いつものごとく弁当屋のリビングに行くと、カオと稀人仲間が眉間にシワを寄せて顔を突き合わせていた。

見るからに、怪しい何かが起こったに違いない。


小さな魔導機のようなモノを見せられた。

小さくてよく解らないが、話を聞くと死霊の森の稀人の建物が、

……建物が、伸びた、らしい。

どうやらダンジョンになったと。


はぁぁ、俺にどうしろと?

いや、どうにかするしかないのだ。

どちらにしても王都に報告するには情報が足りない、行くしかないか。


俺はカオらとダンジョンへ行ったのだった。



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