ゴルダの忙しい日々
----ゴルダ視点----
ある日神殿からこの街の近くに稀人が落ちて来る事を知らされた。
神託があったそうだ。
王都からは魔道具を通して知らせが来た。
通信用の魔道具では大した時間は話せない。
『稀人の保護と秘密裏に調査せよ』との事。
この街に滞在している騎士団の一中隊が向かった。
果たして、死霊の森から無事に連れ帰った稀人は101人だった。
通信魔道具は一度使用するとしばらくは使えない。
王都へ次の連絡が出来るのに日がかかる。
とりあえず、部下に神殿を見張らせた。
101人の稀人が到着した日、ギルドにやってきた男がいた。
見た目から102人目の稀人だろうとすぐにわかった。
理由があり101人とは別に行動をしているようだ。
神殿を張らせた部下から連絡が入る。
どうやら稀人は伝説で伝わる稀人とは少し違うようだ。
102人目…奴が本当の稀人か。
とすると101人は奴を隠すための目眩しか?
しかし奴は呑気によくギルドを訪れる。
借家を借りたいと言ってきたのでスラムの近くを紹介した。
あそこなら部下を数人送り、スラムに紛れて奴を見張らせるのに便利だ。
奴に3人、神殿に1人の部下を張らせていたが、神殿から開拓村に別れるようで開拓村にもひとり送った。大工ギルドからという事にする。
しかし間諜役の部下が足りない。
何しろ稀人が102人だ。次の王都との連絡で補充を頼もう。
神殿から泣きが入った。間諜からも報告を受けている。ギルドの表、通常作業行う者からも稀人への苦情が出ている。
開拓村へ送っていた間諜を引き上げさせた。
どうやら過去の記録に残る稀人とは違う、『稀人』の片鱗が見えないという。
稀人の片鱗を隠す事なく初めから見せていたあの男、カオ。今後は奴を重点に探っていく。
「神殿にいた稀人が借家に押し寄せただと?」
どういう事だ?101人は稀人を隠すためではなかったのか?
「神殿にいた稀人擬き(もどき)に借家が乗っ取られただと?」
カオには次の借家を紹介しようと思っていたところにゴブリンの氾濫が起こった。
しかも発見したのは稀人のカオとランクDの冒険者だ。
ゴブリンどもは餌の匂いを嗅ぎつけると途端に繁殖を始める。
101人の稀人を街まで移すのに騒ぎを抑えきれなかったと報告があったので、恐らくそれを機に一気に増えていったのだろう。
最早街から住民を逃す時間も無い。
腹を括ってこの街に篭るしか無いと観念したが、カオから奇抜な提案が出された。
まさに稀人にしか出来ない案だが、それに乗るしか無い。
ギルドも冒険者も切羽詰まったこの状態の中、さらに事件が起こった。
開拓村にいた稀人達が村を脱走したそうだ。
王都からは『カオ及び4人の稀人の保護』のみが最重要と指示されている。
カオの足枷になりそうな稀人擬きは不要だ。いっそこのタイミングで……。
カオは助けに行った。
甘い男だ。だが俺は、奴のそんなところを好ましく思っている。
何となくそうするだろうとも思っていた。
しかし、甘いだけでなく切るところは切れる、そこも良い。
救出されたのは17名か、今後はカオの役に立つ事を願う。
ゴブリンの氾濫はカオの大魔法であっという間に収束した。
やはりさすがは『稀人』だ。
少ししてカオは家を買うと言い出した。
いいだろう、一等地を売ってやる。目が届きやすいようにギルドの近くだ。
「おい、2軒先の商家、あそこを開けさせろ。すぐだ。王都に話は通してある。王都に店を出すように言って直ぐに移動させろ」
これで監視もし易い。
「何?警備を紹介して欲しい?」
カオから家の警備に冒険者を雇いたいと言ってきた。
よし、家の中に送り込める。
「トリューとガイを呼べ」
開拓村をスッキリさせてくれたおかげであちらも監視がしやすい。
出来ればあのふたりもカオと同じ家に住んでくれればいいのだが。
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ゴルダがカオに振り回されるのはこれからが本番である。
完
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