魔法の詠唱②
ファルビニアでの戦いが終結して少しした頃
カオはファルビニアの戦いを思い出しながら考えていた。
白眼巫女に迫られてターンアンデッドを使った時、『アーンデッド』も『ターンデッド』も効かなかった。
魔法の詠唱は普段端折っても使えていた。
例えば、
『サモンモンスター』召喚獣を呼び出す魔法。
「サモン〇〇」「カモン〇〇」でも召喚獣を呼び出せた。
『エンチャントアーマー』防具の防御力をアップさせる魔法。
「エンチャントアマ」でかける事が出来た。
『ライト』は明るく照らす光を頭上に出す魔法だが、WIZの初期中の初期魔法にもかかわらず、
「ホテルライト」「ハルックライト」など、明るさの異なる光を出せたり、天井に固定したりと応用が効きまくりだった。
では何故、あの時『ターンアンデッド』が成功しなかったのか。
考えられる理由としては白眼巫女の魔法防御力の高さか。
詠唱が問題なのではなく、単純に何度か弾かれたのかもしれない。
あの時誰かの叫びで「ターンアンデッド」を使い、白眼は消えた。
たまたま4度目で効いた?
ふぅむ。
この世界の魔法は『詠唱』より『イメージ』に重きを置いているよな。(※いや、それはカオの勘違いであるが)
俺はあの時、白眼巫女を前にしてかなり焦っていた。
ゲームでは見たことのない魔物だ。
魔物でなくとも怖いぞ、白眼を剥いた女だぞ?
しかも半開きの口元からは尖った歯も見えていた。
咄嗟にアンデッド系の魔法を使おうと思った事は褒めて欲しいくらいだ。
だが、『ターンアンデッド』は詠唱としてどうなんだろう。
まず、「タアン」と「アンデ…」のアンが被っている。
そして、「ターン」と前半部が伸びて、「アンデッド」と後半部は少し重めだ。詠唱としてはイマイチだ。
接近している敵に放つなら、小気味良く唱えたい。
敵が近い分、出来るだけ短く。
「タンデ!タンデ!タンデ!」
少し離れた敵になら、伸ばしつつ力込めて放ちたい。
「タアーーーーーーンデッ!」
溜めてからのドカンである。
うん。
『ターンアンデッド』は『タンデ』で良いよな?
いや、待て。
毎日使うならともかく、久しぶりに使う時に『タンデ』を思い出せるだろうか?
「あれ?何だっけ?アンデッド系に効くやつ、何にしたんだっけ?」
と慌てる自分が見えるぞ。
ううぅむ。
覚えやすく詠唱しやすい言葉……。
ううむ、ううううむ。
………。
「アンデ」でいいか、アンデッドだしな。
アンデッドが出たら、「アンデ」。
アンデッドが出たら、「アンデ」。
おっ?良いんじゃないか?
「アンデ!アンデ!アンデ!」
「アァァーンデッ!」
良い!
いや、俺、天才。
後日、王都のWIZ仲間であるゴンザレスに自慢げに教えたカオであった。
「いや、俺は普通にターンアンデッドでいいや」
するりと返されて少しだけ悲しくなるのであった。
完
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