七不思議と聞けば、少し怖がる気持ちと、ほぼ面白がってわいわい語って楽しむものだと思います、多くの方にとっては。
人が死んでいるという事件が眼の前に起きると、七不思議が急に笑えないものに変化します。バディ的な実鷹(呪い存在派)と蒼雪(否定派)が組んで事件に取り組みますので、軽妙感を楽しめます。
謎があってトリック、という読み方でも素晴らしいと思いますけど、薄闇の中で煌びやかな舞いを見るような、雰囲気のある語りを楽しんで欲しい作品だと私は思います。
個人的には、語りの中で、能楽が現れたり、能のお話が織り交ぜられるのが大変好みでした。
劇が好きな方に特に、
ミステリ愛好の皆様におすすめいたします。
静かにしっとりと、降った雨が土に染みるようなミステリーだと思いました。
学園を舞台にした七不思議といえば、少年少女たちが謎を解明していくのがセオリーですが、この作品は違います。
じわりじわりと七不思議の一つを読者に開示していく。
丁寧に、丁寧に。
始めは、興味本位で触れる学生たちの心境。
中盤は、ハラハラドキドキが待ち受けていて。
終盤の真実は……。
能楽を交えながら謎に迫っていく様は、物語に厚みを加えるどころか、より深く引き込む要素になっています。
故に静かに。そう、静かに進んでいきます。
そして気がつくと、のめり込むこと間違いなし!
是非、最後の解まで読んでほしい作品です。
そして読了後、どう感じるでしょうか。
月波見学園の七不思議を調べると呪い殺される、という噂話がありました。その学園は全寮制でクローズドサークルと言うこともできるでしょう。その学園で七不思議の呪いを信じる実鷹と、七不思議の呪いを否定する蒼雪が出会います。
そんなとき竹村竣が雨の中、階段から落ちて死んだという話を聞きます。竹村竣は七不思議を題材にしようと調べていて、七不思議に呪い殺されたんだと囁かれます。本当に呪い殺された怪異なのでしょうか? それとも人が殺した殺人事件なのでしょうか?
この謎を解き明かす物語です。能楽の知識も交えつつ、七不思議の謎が全てつながるラストは圧巻ですよ!
ぜひお読み頂ければと思います!
七不思議。
学園ミステリー、またはホラーのセオリーでもある「そこにある七つの怪異」。
それを動線に描かれるミステリーといえば、あなたはこれをありがちな物語と捉えるかもしれない。
でもその思い込みをこの作品は、見事なほど容易にするり、と超えてみせる。
七不思議を下敷きにしながら、謎が絡み合う前半、すべてが不気味に合致する後半。それらは能楽の調べに乗って語られるのも、また、瞠目であり、深みを増している。
これから読むひとに、あまり多くは語りたくない。それだけに、正直、この作品の魅力をどう語ればいいか悩む。もどかしくもある。
だけど、ぜひ読んでほしい。
これは本物だ。本物の怪異だ。
物語内の点が線になり、
繋がり絡み、そして解ける。
ミステリというジャンルの根本的な在り方。
その中に在って、この作品は凄い。
読み進めていくと、
読み通った事がここに繋がるか!
そうかそうか、そうなるのか!
という場面が数多く感じられるはず。
そして最後に向かって一気に畳みかけられる。
非常に綿密に繊細に、かつ大胆に。
全てが練り上げられていると良く分かります。
読み始めたら、終わるまで止まらない。
読み終えたら、すっきりと息を吐ける。
実に実に楽しませられる作品です。
それこそ、普段ミステリを読まない私が、
一気読みするくらいには。
ミステリ?
難しそうだなぁ...。
頭使うの嫌なんだけど...。
という方にこそ勧めたい。
さあ貴方も、七不思議の呪いの向こうへ...。
このまま書籍にしてしまえば絶対に売れる、と言うか絶対に買う。が、まず最初に思った事でした。
それ程までに、ミステリーとして完成されているのです。
全寮制という密室、スクールカースト、登場人物たち。余す所なく、丁寧な伏線が敷かれ、またその回収が見事です。
一気に読んでしまいました。
カタルシスの後から押し寄せる、一抹の後味悪さ。
人が抱える業を描いているのだから、当たり前です。
私の心にもきっとあるものだからです。
いや、間違いなくありますね。
社会的なメッセージも多く含まれているのですが、とにかくエンタメとして昇華しきってます。ミステリー好きであれば読み手を選ばない。
これを無料で読めるのが純粋にすごいと思ってしまいました……
いやあ、面白かったあ。
大満足❤️🔥
【東京創元×カクヨム 学園ミステリ大賞応募作品】【全40話完結済み】
七不思議というと有名なのはトイレの花子さん。つい学園ホラーを想像しますが、この物語の舞台は小学校ではなく、地元名士の師弟も通う全寮制の私立進学校です。
幽霊や妖怪の出番もなく、あるのはおどろおどろしい6つの不思議と「ななつめ。知れば、死ぬ」で締めくくられる七不思議。
慕っていた兄が七不思議に殺されたと信じる実鷹《さねたか》と、不思議を人為的な物として合理的に解明していく蒼雪《そうせつ》が、実際に死者の出た事件を調査するミステリー作品です。
最初の殺人と語り継がれる七不思議の変遷。そしてそれが過去の行方不明者と動のように繋がるのか。徐々に解明されていく謎。
実鷹と蒼雪は互いに何を想い、何を求めて真相に迫るのか。深く描き込まれた登場人物の内面も非情に魅力的です。
是非、ご一読ください。
貴方の学校にもあっただろうか、
学園七不思議。
まことしやかに囁かれ、紡がれ続けるもの。
このお話は、月波見学園にある七つ目を知ってしまうと死に至る呪いの学園七不思議が主題。一人の生徒の死亡事故をきっかけに展開される学園ミステリだ。
それぞれの因縁を抱えた主人公達が、この呪いの学園七不思議を解き明かしていく。
何を話してもネタバレになるのでは思ってしまうほどに、緻密に構成されており、一行も目を離せない。
物語の随所に能楽のエッセンスがあり、それがまた興味深い上に作品の深みを増している。
なによりも、私はこの作品は人間の業というものに着目して見て欲しいと思う。
主人公たちの細かな心境も、それぞれの登場人物たちの苦悩も、その全てが圧巻の文字で表されている。
私の拙いレビューでは伝えきれないほど、凄く面白くて、この夏ピッタリの学園ミステリ。
是非、読んで欲しい作品です!
昭和、平成、令和と世の中が移りゆく中、それ以前の伝統芸能である、現代で言われる所の「能楽」を用いた良作であると思う。(劇中では昭和はギリギリ噛んでいないが、上記載はご愛嬌)
能楽はそもそも猿楽と言われ、そこから劇中の「猿」が生まれたか否かは分からないが、その能楽の真髄とミステリーを上手く掛け合わせ、ミステリー界の大御所である某先生を彷彿とさせる読了感が得られる。
個人的には褒めて褒めても褒めちぎり、これでもかと言える程にまで、語りたい部分を語らせたら夜通し語る事が出来ると思うが、勿論このレビューを使ってそんな事はしないし、ネタバレをするつもりも無い。
「猿」と言う一言がネタバレになるならそれはまた、その読者が天才と呼べるだろうが、いない事を願っている。
さて、脱線したが、この作品は実際に現代の日本に於いて実際に行われている事の縮図であるとも考えられる。この作品を読み、読解する事でその問題点に気付ければ、この国はもっと良い方向に向かうとも思っている。
どの学校にでもあるかも知れない七不思議。
しかし、全寮制の月波見学園のものは一風変わったものだった。
――七不思議を調べれば呪われ、七つ目を知れば、死ぬ。
月波見学園の生徒、佐々木実鷹(ささき・さねたか)は、過去のある事件からその呪いを信じていたが、けれど、それは姫烏頭蒼雪(ひめうず・そうせつ)との出会いによって徐々に崩れていくのだった。
果たして七不思議とはなんなのか、竹村竣はなぜ死んだのか。
最後まで見届ける頃には、この学園を取り巻く人の業を間近に目撃していることだろう。
さて、学園ミステリーである本作。
物語はある雨の日、竹村竣が階段の下で死んでいたことから動き出します。
そこから七不思議とはなんなのか、死の真相はなんであるのか、雰囲気のある重厚な文章で、徐々に詳らかにされていその様は、実鷹の心情描写も相まって、読者は自然と先を、もっと先をと事件の真相を知るべく読み進めたくなると思います。
また、作中では能がキーワードになっており、蒼雪が語る能の話を知っている、知らなければ調べると、いっそう推理を楽しめるはずです。
是非、登場人物たちと一緒になって、ペンとメモ用紙を相棒に、この七不思議の謎を解き明かしてみてください。
たとえ自分の予想が外れたとしてもいいのです。
推理をする行為そのものが楽しいのですから。