第7話 偽カップルを続けよう


「――だからアヤカ、俺とカップル配信を続けないか?」


「ふえええええええええええええええええええええええええっ!?」


 学校の屋上で相談を持ち掛けると、アヤカは非常に驚いた声を上げた。


「そ、そ、それってつまり、私と本当のカップルになるってこと……!?」


「いや、あくまで俺は偽の彼氏ってことで」


「あ、なんだ……」


 しゅんとするアヤカ。


 ……なんでそんなに落ち込むんだ?


「もうっ、勘違いさせないでよね! 本当に付き合うのかと思ったじゃない!」


「……もし本当に付き合ったりしたら、高層ビルから紐なしバンジージャンプしてやるってセナに言われてな……」


「うっ……な、なるほど……」


 アヤカはセナの性格をよく知っている。


 彼女も昔から、ちょくちょくセナの世話を焼いてくれてたからな。


 今でもセナのことは気にかけてくれている様子だ。


 義兄としては、とてもありがたい。


「それに今更、”実はカップルじゃありませんでした”なんて言い出せないだろ?」


「……言ったら大炎上間違いなしね」


 ため息を漏らすアヤカ。


 身から出た錆とか覆水盆に返らずって言葉は、こんな瞬間のためにあるんだろうな。


「けど、配信者をやるっていうのは私もいいと思う。ソウタってば、今や超有名人だもん」


「……マスクして髪型変えてなかったらと思うと、恐ろしいな」


 本当なら、目立つのってあんまり好きじゃないんだよなぁ。


 他人の視線って気になっちゃうし。


「昨日からソウタに関する質問が止まらないんだから。皆、正体を知りたくて仕方ないって感じ」


「……勘弁してほしい」


「ほとんど秘密ってことにしてあげてるんだから、感謝してよね」


「ああ、ありがとう。アヤカはやっぱり凄くいい奴だよ」


「ふ、ふん! そんな言葉に乗せられないんだから!」


 彼女は一度プイっと顔を逸らしたが、すぐにこちらへ向き直る。


「……ところでさ、どうしてソウタって『男禁エリア』に入れるの?」


「わからん。こっちが聞きたいくらいだ」


「ちょっと調べたんだけど、全世界でも『男禁エリア』に入れる男はソウタしかいないんだってさ。このスケベ」


「……酷い言い掛かりだ」


「フフ、でも凄いじゃない。世界で1人だけなんて!」


 嬉しそうな顔をするアヤカ。


 彼女は何故か、いつも俺の話をする時楽しそうにするんだよな。


 ちょっと照れ臭い。


「それで――カップル配信するのはいいけど、チャンネルはソウタが新しく作ってよね」


「え? いいのか?」


 先に始めたのはアヤカの方なんだし、彼女のチャンネルで続けてもいい気がするんだけど……。


「いいの! どうせチャンネルの主人公はソウタになるんだから!」


 それより、とアヤカは話題を変え、


「やると決まったからには、週末さっそくダンジョンに潜りましょうよ!」


「それはいいけど……また『渋谷ダンジョン』に潜るのか?」


「うーん、どうせならもっと『男禁エリア』が広いところの方がいいとは思うけど……」


「それなら、セナがオススメしてくれたダンジョンがあったぞ」


「え? どこ?」


「――『池袋ダンジョン』だってさ」


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