第12話 アヤカに触るな!
「む、また私が足手まといになるって思ってる? そうはいかないんだから」
そう言うと、アヤカは左腕に付けたガントレットをアップで映す。
「気付いてた? 実はこれ、アイギス・アーマーの一部なんだ! 今日のために新調したの!」
〈おお、マジ?〉
〈アイギス・アーマーって女性しか着けられないSランク防具じゃん〉
〈確か魔力が込められてて、身体能力を高めてくれるんだよね〉
「そうそう! ガントレットだけだと限定的な効果しかないけど、それでも十分!」
「……Sランク防具を買うお金なんて、どこから捻出したんだ?」
「バイト代とダンジョンで集めたアイテムを売ったお金、コツコツ貯金してたのよ。それでも中古のガントレット片を腕分を買うので精一杯だったけどね」
……知らなかった。
まさかアヤカがそんなにお金を溜めてたとは。
配信のためとはいえ、陰ながらそんな努力もしてたんだな……。
「これがあれば百人力! さあ、ガンガン――!」
『……ククク』
「? なによソウタ、なんで笑うの?」
「え? 俺は笑ってないぞ?」
『クックック……』
「やっぱり笑って――って、え?」
「! アヤカ、構えろ!」
俺は腰の剣を抜き、背後へと振り向く。
――気付くのが遅れすぎた。
こんなに、モンスターに接近されていたなんて。
『フハハハ……』
俺たちのすぐ後ろにいたのは、紫色の肌と大きな翼を持つ、人型のモンスター。
金髪を長く伸ばしており、頭に王冠のような物体を被っている。
初めて見るタイプだ。
〈!?それキング・インキュバスじゃね!?〉
〈やばい!〉
〈アヤカちゃん逃げて!〉
『! マズい、耳を塞いでアヤカお姉ちゃん!』
「え? コイツなんなの? 私知らな――」
どうやらアカネもモンスターのことを知らないらしく、セナに尋ねようとする。
だが、
『……我ニ恋慕セヨ』
キング・インキュバスというモンスターは、アヤカを見つめて言葉を発する。
「! モンスターが言葉を……!」
「恋慕ですって? 誰がアンタみたいなモンスター……に……」
――アヤカの様子がおかしくなる。
直後、なんと彼女は無防備なままキング・インキュバスに歩み寄っていった。
「アヤカ!? なにしてるんだ!?」
『キング・インキュバスは女性に対して強力なチャームを使うの! アヤカお姉ちゃんは催眠状態になってる!』
セナの言う通り、アヤカは操り人形のようにキング・インキュバスのすぐ傍まで赴く。
そんなアヤカを見てキング・インキュバスはニヤリと笑い、彼女の両肩に手を置いた。
「お前……アヤカに触るな!」
〈あわわ……アヤカちゃんが寝取られちゃった……!〉
〈これなんてNTR?〉
〈連続失踪事件の犯人はコイツか!〉
〈助けて彼氏!〉
なるほど、『男禁エリア』に入った女性たちが行方不明になった原因はコイツらしい。
にしても、『男禁エリア』なのにインキュバスがいるとかアリかよ?
モンスターの性別は関係ないってか?
ズルだろそんなの。
『出デヨ、我ガ騎士タチ』
続けてキング・インキュバスはパチンと指を鳴らす。
すると地面に魔法陣が出現し、鎧をまとった3体の骸骨が現れた。
〈スケルトン・ナイト!?それも3体も!?〉
〈1体だけでも超強いSランクモンスターじゃん!〉
〈これはいくら彼氏さんでも……!〉
いよいよ怯え始めるコメント欄。
『クックック……』
キング・インキュバスも勝利を確信しているのか、ニヤニヤと小馬鹿にした笑みを見せている。
アヤカを攫った自分は高みの見物ってワケか。
悪趣味な野郎め。
『『『カタカタカタ!』』』
錆びた剣を振りかざし、3体同時に斬りかかって来るスケルトン・ナイト。
骸骨のくせに動きが速くて、連携までしっかり取れている様子だ。
確かにこれは、一見強そうではあるが――
「邪魔だ」
俺は剣を構え、振るう。
たったの一瞬。
たったの一瞬で――俺は3体のスケルトン・ナイトたちを全滅させた。
『……ハ?』
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