第13話 あとひと押し


〈ほわあぁ!?!?〉

〈スケルトン・ナイト3体をワンパン!?〉

〈あり得ないって!!!〉

〈そいつらSランクモンスターなんですけど!?〉


「Sランクだって? 冗談だろ、こんな奴ら雑魚だよ雑魚」


 この程度のモンスターなら、これまで何匹も倒してきてる。


 皆別のモンスターと勘違いでもしてるんだろう。


 さっさと骸骨共を斬り捨てた俺は、キング・インキュバスへ剣の切っ先を向ける。


「アヤカを返してもらうぞ」


『キサマ……!』


 キング・インキュバスは焦った様子で、アヤカから手を離す。


 するとアヤカは腰から剣を抜き、ゆらゆらと俺の方へ向かってきた。


「手下がやられたから、今度はアヤカを戦わせようってか? このクズめ」


『お義兄ちゃん、アヤカお姉ちゃんを傷付けちゃ駄目』


「わかってる。手早くあのモンスターを仕留めるさ」


『それもNG』


「え……? なんでだ?」


『アヤカお姉ちゃんは魅了状態。そのままキング・インキュバスを殺したら、魅了が治らないかもしれない』


「じゃ、じゃあどうすれば?」


『どうにかしてアヤカお姉ちゃんを正気に戻して。強く感情を揺さぶるの』


「感情を……揺さぶる……?」


「喜怒哀楽、なんでもいい。とにかく激しいショックを与える」


 激しいショックか……。


 俺はアヤカの性格をよく知ってるから、からかって怒らせたり哀しませたりするのは難しくないと思う。


 でもそれは避けたいなぁ。


 アヤカは大事な幼馴染だし、泣かせるような真似はしたくない。


 それに配信で大勢が観てるワケだしさ。


 下手なことをして炎上するのはゴメンだ。


 となれば――アヤカを悲しませず、尚且つ強いショックを与える方法ってことになるよな。


 う~ん……。


 色々と思い付くけど……アヤカが一番驚きそうなことは――


「――」


 目の光を失い、呆然とした表情でアヤカは斬りかかってくる。


 アイギス・アーマーで強化されているためか、その動きは思った以上に俊敏。


 俺が知るアヤカの身体能力を遥かに超越している。


 ――ギィンッ!


 アヤカが振るってきた刃を剣で払い、防御に徹する俺。


〈アヤカちゃん強っ!〉

〈流石はアイギス・アーマーで強化されてるだけあるわ〉

〈彼氏ヤバいんじゃないの……?〉


 不安がるコメント欄。


 確かに、アイギス・アーマーの効果は抜群。


 だけど――幸いなことに、動きを見切れないってほどじゃない。


〈……マジかよ〉

〈ア、アイギス・アーマーの動きに順応してる……〉

〈本当に信じられない。彼は人間なのか!?〉

〈生身でアイギス・アーマーと渡り合うとか、化け物にもほどがあるだろ!〉


 失礼な、だから俺は化け物じゃないって。


 などと心の中でツッコミつつ、鍔迫り合いにもつれ込む俺とアヤカ。


「アヤカ、目を覚ませ!」


「――」


「チッ、やっぱり――やるしかないか」


 剣を振り払い、アヤカの姿勢を崩す。


 そして俺はすぐに彼女の背後に回り込み――腕を回して、抱き締めた。


「――!」


 俺に抱き締められて驚いたのか、アヤカに隙が生まれる。


 だがまだだ。

 これじゃ足りない。


 あと、ひと押し。


「……アヤカ」


 俺はマスクをずらし、アヤカの耳元に口を近付け――


「――愛してるぞ・・・・・


 そう呟き、彼女の頬にそっとキスをした。



「ひゅ…………ひゅわあああああああああああああああああっっっ!?!?!?」


==========


次話は本日の12時頃に投稿予定です。

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