第14話 バカップルかな?
〈うっひょ~~~~~!〉
〈うっひょ~~~~~!!〉
〈うっひょ~~~~~!!!〉
〈チューした!チューしたぞ!〉
〈しかも”愛してる”だってさ!?〉
〈見せつけてくれるねぇ!ホントにねぇ!〉
――私は全身の力が抜け、膝から崩れ落ちる。
もう駄目、立てない。
”愛してる”……?
ソウタが私に、”愛してる”って言ってくれた……!?
「ハァ……ハァ……!」
「ア、アヤカ、大丈夫か……!?」
「い、今、話しかけないで……!」
「え?」
「ソウタの言葉が、ずっと頭の中で響いて……! これ以上なにか言われたら、お、おかしくなっちゃうぅ……!」
完全に腰を抜かし、身体中がゾクゾクする。
全然鳥肌が収まらない。
どうしても口元のニヤケを抑えられず、口の端が釣り上がる。
こ、こんな顔、ソウタに見せられない……!
「わ、悪かった! こんなキザな真似、本当はしたくなかったけど……これもアヤカを助けるためなんだ!」
「わ、わかってる……わかってるからぁ……!」
『……ずるい』
「セ、セナ?」
『ずるいずるいずるい……! 私だって、私だってお義兄ちゃんに”愛してる”なんて言われたことないのに……!』
イヤホンから聞こえてくる、怨嗟に満ち溢れたセナちゃんの声。
それと、ギリギリギリという激しい歯ぎしりの音まで聞こえてくる。
凄い怒ってるみたい。
「セナ、落ち着け! お前がアヤカにショックを与えろって言ったんだ!」
「わ、わかってる……! それでも頭がどうにかなりそう……! あ、無理、私もう死ぬから!」
「セ、セナ! 俺はお前も愛してるぞ!」
「………………”も”?」
「……お前”を”愛してるぞ」
「……スゥー、ハァー……うん、ちょっと落ち着いた」
辛うじて平静を取り戻したらしいセナちゃん。
よ、よかった……。
「と、とにかくこれでアヤカの正気は取り戻せたな。後はキング・インキュバスを倒すだけだ」
『ムゥ……!』
「覚悟しろよ。一瞬で終わらせてやる」
ソウタはキング・インキュバスと相対する。
あくまで余裕の表情を崩そうとせず。
『キサマ……舐メルナ!』
手元に魔力を手中させ、魔力の塊を形成するキング・インキュバス。
――凄い魔力だ。
あんなの直撃したら、人間なんて欠片も残らない。
『死ネェ!』
キング・インキュバスは魔力の塊を発射する。
勿論狙いはソウタ。
でもソウタは避けようともせず、
「アヤカ、伏せてろ」
――剣の斬撃で、魔力の塊を両断。
真っ二つにされた魔力の塊はすぐに消滅し、跡形もなく消え去った。
『……ハァ?』
〈はああああああ!?〉
〈彼氏、魔力を斬ったぞ!?〉
〈魔力って斬れるモンなのか!?〉
〈キング・インキュバスの魔力って半端ないはずなんだが!?〉
「皆、なに言ってんだよ。魔力くらい簡単に斬れるって」
気軽にコメントへ答えるソウタ。
「いいか、こうグッと剣を握って、魔力に向けて真っ直ぐ刃を当てる。包丁と一緒だって」
〈意味不明すぎる〉
〈包丁に例える辺りが既にイカレてるよ……〉
〈Sランクモンスターの攻撃は料理の具材だった?〉
視聴者はなにがなんだかわからない様子だけど、私もソウタの言ってることが全然わからない。
それに気が付けば、視聴者の数が配信開始の時より桁違いに増えてる。
「いち、じゅう、ひゃく……同接者数300万人!?」
私はスマホ画面を見て唖然。
たぶん――いや間違いなく、ソウタは今日本で一番の同接数を叩き出してる。
もうコメントの流れる速さなんて目で追えないもん。
今回の配信は、前回よりももっとバズっちゃうかも――。
「キング・インキュバスだっけ? アヤカを誑かしたこと、後悔するんだな」
『ムググ……!』
キング・インキュバスは、今度は魔力を集めて剣のような形にする。
そして大きな翼をはためかせ、
『ハアアアアアッ!』
ソウタ目掛け、斬りかかってきた。
対するソウタも剣を構え――
「遅い」
一気に振り抜いたかと思うと――魔力の剣ごと、キング・インキュバスを斬り捨てた。
一瞬の出来事である。
〈ワン!パン!〉
〈ワンパンだあああ!!!〉
〈キング・インキュバスを!ワンパンで仕留めやがったああああああああああああ!!!〉
〈なんで!?どうしてこんなことできるん!?〉
狂喜乱舞する視聴者たち。
私に至っては、もう目の前の光景が信じられないってレベル。
〈同接数ヤバ!〉
〈今の一瞬で同接数400万超えたんだが!〉
はい、ソウタがキング・インキュバスを仕留めた瞬間に、同接数400万人を超えました。
ちなみにまだ伸びてる。
「ふぅ……とりあえず危機は去った感じか」
ソウタは鞘に剣を納め、私の方へと歩いてくる。
「えっと……その、なんだ? 少しは彼氏らしいことできたかな――なんて?」
どうやらソウタも気恥ずかしさが残っているようで、僅かに頬を赤らめて言う。
そんなソウタを見た瞬間、
「ソウタ……しゅきぃ……!」
私は、完全に堕ちたのだった。
――この後、私たちはキング・インキュバスに攫われた女性たちを見つけ出して救出。
皆かなり衰弱していたが、ほとんどが一命を取り留めていた。
……それと、思った通り『S×Aチャンネル』の初配信は大バズり。
SNSのトレンドを席巻し、
無数の切り抜き動画が作られ、
配信を録画した公式動画の再生回数は、たったの1週間で1億再生を突破したのだった――。
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第1章はここまでとなります!
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「カップル配信して!」と幼馴染に頼まれた俺、うっかり女性しか入れないはずのダンジョンに入ってSランクモンスター相手に無双した結果、バズりまくってしまう メソポ・たみあ @mesopo_tamia
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