第8話 私、立派な彼女になるから!
――週末。
俺とアヤカは、『池袋ダンジョン』の地上入り口まで来ていたのだが――
「……」
「あ、あの~、セナちゃん……?」
俺と一緒に、セナも現地に来ていた。
俺とアヤカが合流するなり、セナは途方もないプレッシャーでアヤカを睨み付ける。
しかも俺を守るように、両手を広げて俺とアヤカの間に入っているという状況。
かなり気まずい。
「きょ、今日はセナちゃんも来てくれたのね~。会えて嬉しいな~、アハハ……」
「私はお義兄ちゃんのマネージャーだから当然。それより、必要以上にお義兄ちゃんに近付かないで」
「こらセナ、近づかなきゃカップル配信できないだろ……」
警戒心全開のセナ。
その様子はまるで威嚇する子猫のようで、ちょっと可愛い。
この状況でも可愛いと思えるなんて、流石は俺の義妹だ。
しばし警戒を続けるセナだったが――ふと両手を下げる。
「……?」
「……お義兄ちゃんを取られるのは嫌。でもカップル配信の方が、お義兄ちゃんのチャンネルを大きくできるのも事実」
そう言ってセナは顔を上げ、アヤカの目を見つめる。
「アヤカさんなら、お義兄ちゃんとの配信を許せる。だから、ちょっとだけ我慢する」
「セナちゃん……!」
「”アヤカお姉ちゃん”、お義兄ちゃんをよろしくね?」
「うぅ……うわぁーん!」
セナの言葉に感極まったらしく、アヤカはセナを抱き締める。
「ありがとうセナちゃん! 私、立派な彼女になるから! セナちゃんのことも、ちゃんと妹として大事にするから!」
「……勘違いしないで。偽の彼女としてお義兄ちゃんをよろしくって、そう言っただけ」
ちょっぴり照れ臭そうにするセナ。
やっぱり、セナはアヤカのこと嫌いになれないんだよな。
「それより、もうすぐ配信の時間」
「ああ、それじゃスマホの用意を――」
「大丈夫、撮影はドローンを使う」
そう言って、セナは持ってきたケースの中から小型の飛行ドローンを取り出す。
カメラが付いていて、単独で撮影できるヤツだ。
「私がダンジョンの外からドローンを操作する。2人はダンジョンの攻略に集中して」
「おお、それは頼もしいな」
「それと、はいコレ」
「コレは……イヤホン?」
「ドローンの映像を見て、気になる点があれば音声でアドバイスする」
「オペレーターをしてくれるってことか」
「そう。別にお義兄ちゃんとアヤカさんが怪しい真似をしないように注意するためとか、そんなんじゃないから。放送事故を防ぎたいだけだから」
「……」
……なんだろう。
やっぱり俺たちって、あんまり信用されてない?
配信中に怪しい真似なんてできないと思うんだけどな……。
俺だって初めてすぐにチャンネルBANは嫌だし……。
セナはコホンと咳き込むと、
「それじゃ――『
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