第10話 それ以上やめて……!


「そ、それじゃあ移動の間に質問へ答えていくね? なにか聞きたいことがあればコメントして?」


〈彼氏さんはどうしてあんなに強いんですか?〉


「どうしてって言われてもな……。昔からダンジョンに入ってたからとしか」


〈昔ってどのくらい?〉


「えっと、俺が7歳の時からだから……10年前からか」


〈7歳!?〉

〈小2の頃からダンジョンに潜ってたの!?〉

〈頭おかしいだろ!〉


「まあ最初はしんどかったな。でも、慣れれば子供でもモンスターとか狩れるようになるぞ?」


〈えぇ……〉

〈化け物はやっぱり化け物〉

〈これまで、ロック・ドラゴン以外にはどんなモンスターを狩ったんですか!?〉


「えっと……名前は知らないけど、首が何本も生えた赤いドラゴンとか、透明なガーゴイルとか、あとはサソリの尻尾が生えた空飛ぶライオンとか?」


〈ん……?〉

〈それってまさか、フレイム・ヒュドラ、クリスタル・ガーゴイル、マンティコアか?〉

〈流石に冗談でしょ?〉

〈全部クッソ強いSランクモンスターなんですが……!?〉


「え? アイツらがSランク? そんなワケないだろ、弱点さえ見つければ簡単に勝てたぞ」


〈……ヤバい〉

〈本気で言ってるならイカレてる〉

〈高名なパーティが裸足で逃げ出すレベルっすね……〉

〈彼氏さん、マジで何者……?〉


 さっきから失礼なコメントが多いな。

 人を化け物とかイカレてるとか。


 俺は生計を立てるために、モンスターを狩るしかなかったから狩ってただけだ。


 セナを路頭に迷わせるワケにはいかなかったからな。


 俺はあくまで普通だし、イカレてもいない。


〈そ、それじゃあアヤカちゃんのどんなところが好きなの?〉


 ――お、ようやく違う話題が来たな。


「アヤカの好きなところか……」


 そりゃ色々思い付くけど。

 幼馴染で付き合いも長いし。


 でもあえて言うなら、


「素直で明るくて、一緒にいて楽しいってところかな。幼馴染だからわかるけど、アヤカは本当にいい奴だし、すごく可愛いところも多いんだ。それに俺の義妹にも優しくしてくれる。だからアヤカと出会えて本当によかったと――」


「……ソウタ」


「ん?」


「も、もう……もういいから……もう十分だから……それ以上は本当にやめて……!」


 アヤカはこれ以上ないってくらい顔を真っ赤にして、俯き気味に俺の袖を引っ張る。


 恥ずかしくてたまらないって感じだ。


「な、なんだよ……そんなに恥ずかしがることないだろ……? なんか俺まで恥ずかしくなってきた……」


 羞恥が伝播して、こっちまで顔が熱くなってくる。


 ヤバい、手汗まで出てきた……。


〈熱い〉

〈アチアチ〉

〈ラブラブすぎんだろ〉

〈久しぶりに壁を殴りたくなった〉

〈壁殴り代行センターはここですか?〉

〈お義兄ちゃん帰ったら覚悟して〉


 またも盛り上がるコメント欄。


 どうにも俺とアヤカがイチャつくと、視聴数が喜ぶらしい。


 逆にセナは怒るみたいだけど。


 これから先、こんな風にカップル配信をしていくことになるのか……。


 俺、この気恥ずかしさに耐えられるかな……?


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