第2話 バズってしまう偽彼氏①(※アヤカ視点)


 ――信じられない。


 私、夢でも見てるのかな?


「ソウタ……!? か、身体は大丈夫なの……!?」


「当たり前だ。アヤカこそ怪我はないか?」


〈なに!?なんで生きてんの!?〉

〈普通死ぬだろ絶対!〉

〈彼氏の身体どうなってんだよ!?〉


 もの凄い勢いで書き込まれていくコメント欄。


 皆かなり驚いてる。

 私だって同じ気持ちだ。


 ロック・ドラゴンの攻撃なんて受けたら、普通の人間ならまず即死。


 運良く生き残れても、大怪我は免れないはず。


 なのに、ソウタはピンピンしてる。


「覚悟しろよ岩トカゲ。俺の幼なな――いや、俺の彼女を狙ったことを後悔させてやる」


『グルルゥ……!?』


「彼、女……?」


 その一言に、私はキュンとしてしまう。


 ソウタが私のことを、彼女って呼んでくれるなんて……!

 嬉しい……!


 で、でもわかってる。


 ソウタはきっと、彼氏役を演じてくれているんだ。


 だってまだ左手でスマホを構えてるし。


 いや、それもかなりおかしいんだけど。


『グルオオオオオ!』


 ロック・ドラゴンはダンジョン全体に響き渡るような咆哮を上げる。


 すると地面を突き破って、ロック・ドラゴンを小さくしたようなモンスターが何体も湧き出てきた。


 ロック・リザードの群れだ。

 だいたい全部で20体くらい。


 大きい岩トカゲが、小さい岩トカゲを呼んだみたい。


『『『ギュワアア!』』』


「キャッ……!?」


 ロック・リザードの群れの数体が私を取り囲む。


 弱そうな方から片付けようって魂胆なのかも。


「だから……アヤカを狙うんじゃねぇ!」


 ソウタは群れの中を一瞬で駆け抜け、私を囲っていたロック・リザードを斬り倒す。


 それと群れ中を突っ切る瞬間、何体かをすれ違いざまに斬撃。


 ほんの一瞬で、ロック・リザードの数を半分にまで減らしてしまった。


 ちなみに左手でスマホを持って撮影を続けているので、剣は右手だけで振るっている。


 剣が得意だって知ってはいたけど、まさかここまでだなんて……。


 ソウタは随分前に両親が他界していて、生計を立てるために中学校の頃からダンジョンに潜って、モンスターを倒したりアイテムを採取したりしていた。


 ついでにモンスター相手に剣術を磨いてる、って本人から聞いてはいたけど……。


 ちょっと、凄すぎない……?


『ギュワアァ!?』


「どうせ狙うなら、初めから俺を狙えっての」


 ソウタは残りの10体もまとめて斬り捨て、数秒足らずで瞬殺。


 本当に一瞬の出来事だった。


〈ふぉ!?〉

〈なに、なにが起こったん!?〉

〈手ブレで映像乱れたと思ったら全滅してたんだが!?〉

〈お使いのモニターは正常です〉


「あ、手ブレしてたか? ゴメンな、ちょっと速く動いたから」


〈いや速すぎるだろ!?〉

〈明らかに人間の動きじゃなかったよな……!?〉

〈セルフ2倍速ですか?〉

〈ロック・リザードの群れを瞬殺とか化け物かよ彼氏!?〉


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