「カップル配信して!」と幼馴染に頼まれた俺、うっかり女性しか入れないはずのダンジョンに入ってSランクモンスター相手に無双した結果、バズりまくってしまう
メソポ・たみあ
第1章 偽物のカップル配信
第1話 偽物カップルの配信
「私とカップル配信して!」
俺の幼馴染、
「お願い! 一緒にダンジョンに潜ってほしいの!」
パンッと両手を合わせ、お願いのポーズをしてくるアヤカ。
それに合わせて、彼女の長いツインテールがフワリと揺れる。
「……なんで?」
「と、友達に啖呵を切っちゃったのよぉ。私だって恋人いるし、カップル配信くらいできるし、って……」
俺、
――ダンジョン。
今から数十年前、この世界に現れた謎の迷宮群の総称である。
ダンジョンの中にはモンスターという凶悪な生命体が跋扈しているが、特殊なアイテムや素材も豊富に存在していた。
近頃はそんなダンジョン攻略の様子を撮影して配信し、人気を獲得するのが一大ムーブメント化。
アヤカもダンジョン配信者をやっていて、既に1000人くらいチャンネル登録者がいたりする。
「俺とお前はカップルじゃないが?」
「し、知ってるわよ。だから頼んでるの!」
「っていうか、恋人作れなくて悩んでるくせに、見栄なんて張るなよ……」
「作れないんじゃなくて作らないだけ! そ、そもそも私が好きなのは……ずっと……ゴニョゴニョ……」
「ん? なんだって?」
「と、とにかく頼めるのはソウタだけってこと! それにソウタはダンジョン経験者でしょ!?」
「それは、まぁ……」
「だから一生のお願い! ね!?」
う~ん……。
ここまで真剣に頼まれるとなぁ……。
最近はダンジョン配信の中でも、恋人同士である若い男女が一緒にダンジョンを攻略する『カップル配信』が人気。
特に俺やアヤカのような高校生の間では、カップル配信をするのが一種のステータスみたいな風潮まである。
アヤカは幼馴染で付き合いも長いし、流石にあしらうのは気が引けるな……。
俺にとって彼女は、大事な家族の一員みたいなもんだし。
仕方ない。
「わかった。一日だけだぞ?」
「!? 本当!?」
「ただマスクで顔は隠すからな。髪型も少し変える」
「そ、それって、私のためにお洒落してくれるってこと……?」
「身バレが嫌だってだけだが?」
▲ ▲ ▲
「――よし、それじゃ撮影始めるぞ」
ガチガチに緊張したアヤカに、俺はスマホのカメラを向ける。
初のカップル配信ということもあってか、今日の彼女は普段よりお洒落で可愛い。
幼馴染の俺でもちょっとドキッとしてしまうな。
「い、いいわよ……!」
俺が撮影を始めると、アヤカはニパッと笑顔を作る。
「皆、アヤカのチャンネルへようこそ! 今日もダンジョンから配信していくね!」
〈アヤカちゃん今日も頑張って〉
〈相変わらず可愛ええのう〉
〈あれ? なんかいつもとアングル違う?〉
〈今日は撮影者おるんか〉
自分のスマホでコメント欄を確認していたアヤカは、フフッと笑う。
「あ、気付いた? そう、なんと今日は同伴者がおります!」
彼女はこちらに向かって歩いてくると、俺の腕に抱き着く。
そして小声で「一緒に映して」と言うので、俺はスマホを掲げて2人一緒にカメラに映した。
「じゃーん! 紹介するね、私のか、か……彼氏っ、のソウタ!」
何故か途中から頬を赤らめ、めちゃめちゃ言い淀むアヤカ。
お前が今回の企画の言い出しっぺなんだから、もっと堂々としてくれよな。
「どうも。ソウタっていいます」
カメラに向かって挨拶する。
俺は黒マスクで顔を隠し、前髪もぐっと左右に分けてデコを出している。
普段の俺は前髪を目元まで垂らしているから、これなら一目で藤堂ソウタとはわかるまい。
それに俺は撮影係もやるから、あまり画面には映らないはず。
身バレはそこまで心配せずともいいだろう。
「今日は一日限定、カップル配信でお届けするね!」
〈アヤカちゃん彼氏おったんか!〉
〈まさかアヤカちゃんのカップル配信が観れるとは〉
〈最近カップル配信が流行りだからワクテカ!〉
〈彼氏くん結構イケメン?〉
「あ、イケメンだってさソウタ。私も鼻が高いぞ~?」
凄い笑顔で、グリグリと肘で脇腹を突っついてくるアヤカ。
……なんでお前の方が嬉しそうなんだよ?
「それじゃ、さっそくダンジョンに潜っていくね。今日は『渋谷ダンジョン』のAランクエリアから行くよ」
〈渋谷のAランクエリアって、確か男禁エリアがある場所だっけ〉
「そうそう、女性しか入れない区域があるところ」
〈うっかり男禁エリアに入っちゃ駄目だよ〉
〈渋谷ダンジョンの男禁エリアってSランク相当らしいね〉
「あ、そうなんだ。実は私、まだ入ったことないんだよね。危ないって聞いたから」
――男禁エリア。
正式名称『男子禁制エリア』
多くのダンジョンには、何故か男性が入れず女性のみが入れる区域が存在する。
ある地点で男性は透明な壁に弾かれ、そこから先へ進めなくなるのだ。
そのため、どちらかというと男性の探索者よりも女性の探索者の方が重宝される風潮がある。
中には女性だけが所属できる探索者ギルドも存在するほど。
だけど……俺は今まで何度もダンジョンに潜ってるのに、男禁エリアに遭遇したことないんだよな。
本当に実在するのだろうか?
そんなことを思いつつ、俺とアヤカは雑魚モンスターを狩りながらAランクエリアを進んでいく。
〈アヤカちゃんと彼氏さんはいつから付き合ってるの?〉
「お、教えなーい」
〈彼氏くんとはどこまで進んだ?キス?それ以上?〉
「ノ、ノーコメント!」
〈彼氏との馴れ初めおせーて!〉
「わ、私のソウタは幼馴染だったから、それでいつの間にか……あ~もう恥ずかしいってばぁ!」
『ギャイ!』
片手剣でゴブリンを切り払い、コメントにも返事していくアヤカ。
無論俺たちは偽装カップルなので、当然ながら大半の質問には答えられないが。
っていうか、返事ついでに斬られるゴブリンがちょっと可哀想だった気もする。
「アヤカ、足元気を付けろよ?」
「わ、わかってるわよ! それより、ソウタもなにか喋ってよね」
「なにかって言われてもなぁ……」
彼氏らしいこと……彼氏らしいこと……。
あんまり思い付かないが――
「あ、今日のアヤカは可愛いぞ。いつもよりお洒落だし、つい目を奪われるな」
「っ!? ふえぇ!?」
〈おっと、惚気が始まったぞ〉
〈カップル配信の醍醐味〉
〈照れるアヤカちゃん可愛い〉
〈もっとイチャイチャしろ〉
顔を赤くするアヤカと、盛り上がるコメント欄。
なるほど、こんな感じのことを言えばいいのか。
いい勉強になるな。
そうこうしている内に――
〈あ、その辺りが男禁エリアのはずだよ〉
コメントが書かれる。
だがそれを見て、俺は頭上に"?"を浮かべた。
「へえ、ここから男禁エリアなんだ。それじゃあ引き返して――」
「いや、もっと先じゃないか?」
「え?」
「この辺で見えない壁に弾かれたことなんてないぞ。もっと先だろう」
俺はカメラをアヤカに向けたまま、スタスタと先へ進んでいく。
〈あ、あれ……?〉
〈え?その辺に見えない壁があったはずだよな?〉
〈おかしくね?どうなってんの?〉
〈場所違う?いやでも間違いなく……〉
困惑するコメント欄。
大方、多くの視聴者が場所を勘違いしてるのだろう。
ともかく先に進む俺たち2人。
するとしばらくして、
『グルルル……』
「――!」
モンスターの気配を感じた。
どうやら俺たちを狙っているらしい。
「アヤカ、注意しろ。モンスターがすぐ近くにいる」
「え? すぐ近くって――」
刹那――アヤカの背後に、なにか巨大な物体が落ちてくる。
ダンジョンの天井に張り付き、襲撃の機を伺っていたのは、Sランクモンスターのロック・ドラゴン。
全身に岩石をまとった竜は、片腕を振り上げてアヤカを狙う。
『グルオォ!』
「アヤカ!」
咄嗟に身体が動き、俺は彼女を庇って突き飛ばす。
直後――俺はロック・ドラゴンの腕に殴り飛ばされた。
「ぐあ――っ!」
威力は凄まじく、そのまま壁を凹ませるほどの勢いで叩き付けられてしまう。
「――ッ! ソウタ!」
『グルルルゥ!』
「よくも……よくもソウタを――!」
「……ああもう、痛いじゃねーかよ」
「――え?」
『グルゥ?』
〈は?〉
〈え?は?〉
〈ウソでしょ……?〉
〈彼氏さん今、ロック・ドラゴンに殴られたはずだよね……?〉
〈ロック・ドラゴンの腕って、戦車も叩き潰せるパワーなんだけど……!?〉
「ふぅ、スマホのカメラは無事だな」
俺はスマホ画面が割れておらず、配信も続いていることを確認。
そして壁にめり込んだ身体を起こし、剣を抜いてロック・ドラゴンへ近づいていく。
「……よくもアヤカを狙ったな。落とし前はキッチリ付けてもらうぞ」
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