第3話 バズってしまう偽彼氏②(※アヤカ視点)


 盛り上がるコメント欄。


 それに視聴者数もどんどん増えてる。


 この配信を見てた視聴者は最初1000人もいなかったのに、今は10000人以上。


 それも、まだ現在進行形で増え続けてる。

 しかも凄い勢いで。


 あ、たった今20000人を超えた。

 なんだか、まだまだ増えそうな気配。


 ……ヤバくない?

 これ……明らかに配信がバズってるよね?


 残す敵はもうロック・ドラゴンだけ。

 ソウタは私に近付いてきて、


「悪いアヤカ、スマホ持っててくれるか?」


「ふぇ? う、うん……」


 流石にロック・ドラゴン相手に片手は面倒なのか、撮影係を私にバトンタッチ。


 剣を両手で構え、ロック・ドラゴンと対峙する。


『グルルルウゥ……!』


「そんなに怯えるなよ。すぐに終わらせてやるから」


『グルオォ!』


 ゴツゴツとした岩肌の腕を振るい、攻撃してくるロック・ドラゴン。


 だがソウタはそれをヒラリと回避し、奴の腕をスパッと剣で斬り落とした。


『グギャアアア!』


〈ひゅい!?〉

〈ロック・ドラゴンの腕がバターみたいに斬れたぞ!?〉

〈ロック・ドラゴンってドラゴン種の中でも特に硬いはずだよな!?〉

〈Sランクの宝剣でも使ってんのか!?〉

〈オーマイガー! 彼はサムライだ!(英語)〉


 私が知る限り、確かソウタの剣はリサイクルストアで購入した安物だったと思う。


 切れ味なんて大したことないはず……なんだけど……。


 ソウタは隙だらけとなったロック・ドラゴンの背に飛び乗ると――


「終わりだ」


 岩で覆われた首を、剣で斬り落とした。


『グギャ……!』


 岩だらけの巨体が、ズダーン!と倒れる。


 あまりにも呆気なく、ロック・ドラゴンが倒されちゃった……。


〈マジで1人で倒しやがった……〉

〈高名なギルドでも苦戦する相手だよな、ロック・ドラゴンって……!?〉

〈この配信の切り抜き絶対バズるぞ〉

〈既にSNSのトレンドに上がってて草〉

〈男禁エリアに入れるしモンスター相手に無双するし、彼氏さん意味不明すぎる〉


「ふぅ、これでよしっと。スマホありがとな、アヤカ」

 

「え……あ……うん……」


 私がスマホをソウタへ返すと、彼は撮影を続けようとする。


「さて、それじゃ配信を続けるか。このまま先に――って、アヤカ?」


「……ごめんソウタ、配信は終わりにしよ」


「え? なんで?」


「腰が……腰が抜けちゃった……」


 私は完全に腰を抜かし、立ち上がれなくなっていた。


 ロック・ドラゴンに襲われた恐怖と、ソウタの異常過ぎる強さへの驚き。


 勿論それもあるんだけど――


「だ、だめぇ…………私の彼氏、カッコよすぎるぅ……!」


 小声でポツリと呟く。 

 顔が熱くなって、もうマトモにソウタを見れない。


 身体を張って私を助けてくれたソウタが、


 私を"彼女"って言ってくれたソウタが、


 もう、もう本気でカッコよくて、腰が抜けちゃったよぉ……!

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