Daily #3 珈琲とストレッチ

 寝返りを打とうとして、身体の痛みに息を詰めた。これはダメだ。私は観念してベッドから降りた。

 窓を開けるとひんやりとした空気が入ってきた。


(そろそろサーキュレーターをしまわないとなぁ)


 ケトルに水を汲み、スイッチを入れた。沸くまでの間、洗面所で身支度を整える。化粧水をつけながら、沸いたお湯で作った白湯に口をつけた。


「はー……五臓六腑に染みわたるわー」


 身体の内側からじんわりと温まる感覚に頬を緩ませる。温かいというのはいい。心が安らぎ、解れていく。


 白湯は体調によって味が変わるのだそうだ。甘い、苦い、酸っぱい、しょっぱい、美味しい。私の今日の白湯は甘い味だった。なるほど、確かに少々むくんでいる。


 飲み干すと軽く洗い、もう一つコップを取り出した。

 ドリップコーヒーの封を開けてお湯を注ぐ。私はコーヒーは飲めないのでいつもカフェオレなのだが、淹れている時のコーヒーの香りが好きだ。


「コーヒー淹れたよ」


 テーブルに置いて声をかけると、パソコンでヒーリングミュージックを流して壁に立て掛けてあるストレッチポールを床に転がした。その上に私も寝転がる。


「いたたた……」


 そろりそろりと息を吐く。相当身体が強張っているようだ。ポールの上でゆらゆらと身体を揺すりストレッチをして身体が解れてくると、そのまま軽く筋トレを始めた。


 私は一旦やると決めたらかなり負荷をかけて自分を追い込む癖がある。筋トレもやりすぎてしまい、ケアが追い付かず他の事柄なども積み重なり、結果的に身体を痛めて今に至るのだろうと私は思っている。自業自得だ。

 しかし自分に負荷をかけることを一度も苦に思ったことはない。むしろ楽しんでやっている。

 今後の私の課題は『加減を知ること』だ。


 ちょっと休憩、とポールの上で伸びをした。ヒーリングミュージックを聴いていると、岩盤浴をよく思い出す。よく行く岩盤浴にはこのような音楽がいつも流れているのだ。


「よきかなー……」


 そのまま寝てしまったらしい。気配がして目を覚ました。その気配を探ろうと体勢を変えたら、ポールから落ちてしまった。


「いっ……たたた」


 ゆっくり起き上がると、何をしているんだ、と言いたげな顔と目が合った。

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