Daily #14 どんぐりと中トトロ

 通勤時はいつも公園の中を歩くようにしている。

 緑が目に優しいし、少しでもマイナスイオンを浴びて癒されようという考えからだ。


 代わり映えのしない道路沿いを歩くのはもう飽きた。公園内を歩くと季節の花や光が楽しめるのでとても良い。


 今朝もいつものように公園内へ足を踏み入れた。

道に落ちていた銀杏を踏まないように視線を落として歩く。


 ――コツン、


 ふいにどんぐりが落ちてきた。

 もうそんな季節なのかと思っていると、少し先でどんぐりがまた落ちてきた。


 ――コツン、コツン、


 ひとつふたつ。

 まるで私を誘うように落ちてくる。


 どんぐりが落ちると言えば、私の中では中トトロが真っ先に思い浮かぶ。

 ひょっとしてファンタジーが私を誘っているのではないかと私は期待に胸を膨らませながら視線を上げた。


 そして――正面でブランコを漕いでいた知らないオジサマと目が合った。



 いやいや。いやいやいやいや、ちょっと待って。

 あのオジサマが中トトロだとか嘘だよね?

 え、まさか中トトロの擬人化?

 中トトロが擬人化したらオジサマになるってこと?

 私をファンタジーの世界に連れてくのがオジサマってこと?


 …………ないわー。



 私はオジサマから目を逸らし、目線を遠くに定めて通り過ぎる。


 私をファンタジーの世界に連れて行ってくれるのは、小動物か妖精がいい。

 私の頭の中はいつだってファンタジー。

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お疲れさんのぐーたらライフ 海月ゆき @yuki_kureha36

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