Daily #13 金曜夜
浴室の扉を閉めると、私は洗面所に置いてある小型のBluetoothスピーカーの音量をひとつ下げた。水気はあらかた拭き取っていたので足元だけ丁寧に拭い、衣服を身に付ける。
スキンケアをしても今はボディケアまで気にしていられる心の余裕はない。帰宅してすぐにシャワーを浴びた自分の行動を褒められたいくらいだ。
そこへスマホがぺかりと光って時間を知らせてくれた。
「やば、もうこんな時間?」
最近は残業続きで帰宅が二十二時前後になることが多い。
残業は自分から志願しているが、他部署からの応援にと私を指名されては断る理由がない。せっかく働きにきているのだから動けるうちは何時間でもやる、というのが持論だ。
他部署での自分への評価はすなわち自部署の上司への評価。ひいては直属の上司から自分への評価に繋がる。評価で基本給が上がるわけではないが、信用問題に関わるとなれば張り切らないわけがない。
……張り切りすぎて自部署の人たちから若干心配されているが、体調管理は今のところ出来ている。
実のところ、必要とされる人になりたいというのが本音だ。
誰かが私を必要としてくれるなら、私のできる限り応えたい。
必要とされないのならそこを去るだけだ。
私は乾いたタオルでバサバサと髪の水気を拭き取りながら、ケトルに水を入れてお湯を沸かす。
その間に髪を乾かし、コップとお椀を取り出して白湯とインスタントの味噌汁を用意した。
「そうそう、これも忘れずにね」
冷蔵庫から缶チューハイとおつまみを取り出す。
それらを居間のテーブルに置いておいた、帰宅時にテイクアウトしたカルビ丼大盛りに添えてパソコンを開いた。
窓際には昨夜半分寝ながら干した大量の洗濯物。現在洗面所で回している洗濯機。
食後には、取り込んで畳んで仕舞ってまた干すという七面倒な作業が待っている。
明日は休み。
寝倒して体力も気力も回復させるという強い目標が私にはある。
「ま、とりあえずお肉食べよ。話はそれからじゃ!」
一週間の労働の終わりの、ささやかな晩餐のはじまりはじまり。
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