Daily #12 どこかへいきたい

 乗り込んだ電車から見える、駅の売店。

 壁際に並ぶスナック菓子を見る度に、買いたいな食べたいなといつも思う。だが結局、私は和菓子を選ぶのだろう。


 ピリリリ、と発車ベルが鳴り扉が閉まった。

 ゆっくりと電車が進み始めてホームにいる人たちが後ろに流れてゆく。


(このまま終点まで行ってのんびり歩きたい)


 電車の窓にパラパラと打ち付ける雨を眺めながらぼんやりとそう思う。


 倦んだ日常と閉塞感。空間が狭まり小さな箱に押し込められているような、息が詰まる感覚。

 いつもいつも同じことの繰り返し。出口の見えない迷路に迷い込んでいる気分だ。


 電車の車内では、パーソナルスペースを一切無視した距離感の男、男、男。そのうちの一人と目が合った。


(……気持ち悪い)


 不躾な視線に耐えきれず、私は微かに顔をしかめる。

 目線を車窓に移して視界に入れないように努めた。


 空気が薄い。息が苦しい。

 周りに気取られたくなくて、私は浅い呼吸を懸命に押し殺した。

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